昔話って、ちょっととっつきにくい感じがすると思っていたんだよね

この前の記事で、昔話的なページ割りってこうじゃないかとか、紙ではできなくても電子書籍ならできるとか、後日になって「どうもダメっぽい」とか書いたのですが。

これってお笑い芸人の、絵(字)をかいた紙をどんどんめくっていくやつみたいだなあと、さっきの記事に2/22追記を書いてて思いました。

むかし、ほんとうに昔話を聞いてたひとたちは、どんな状況だったんだろう

昔話って、昔話が本当に囲炉裏端で語られていた時代(があるならば)には、聞き手はどんなふうに聞いていたんだろうか。

実際に鈴木サツさんという方の語りをCDで聞いたことがあります、そういうかたちで聞くことはできます。
だけどその語りをどんな状況で誰に語っていたのか、聞き手はどういうふうに聞いていたのか、想像してみることはできても、その想像と実際はかけ離れているのかもしれないし、実際の状況を私が見ることは不可能です。

私は昔話は大好きだけど、それに触れるかたちは本のページとしてだったり、きちんと作られたアニメーションだったり、誰かの朗読だったり、もし機会と勇気があるのなら図書館の「おはなしのじかん」だったり(勇気がないので未経験)。

要するに、みんなどこかかしこまったというか、真面目っぽさがあるというか。
そして、昔から昔話はこんなふうだったのか、そうではないのか。

昔のことはわからないけれど、今、私が昔話にふれるときには、このかしこまった真面目っぽさがかならずついてきます。

子どものときにはいちばん身近な物語だったはずなのに、今はなぜだかちょっとだけ「とっつきにくさ」を感じます。

だけど、お笑い芸人が絵をかいた紙をどんどんめくってネタをやっているのをTVで見ているときには、そんなことは感じません。
セブンイレブンのイカリ豆をつまみながら、げらげら笑って見てたりします。
そのネタの内容がもし昔話でも、やっぱりげらげら笑っているんだと思います。

おつまみを食べながらというのはTVだからで、実際は話している人を前にしてそんなことはしないだろうけど、私が今昔話に感じている「とっつきにくさ」は、もしかしたら、むかしの昔話の現場には、なかったのかもしれない。
そんなこともちょっと考えます。

私の妹のローラがしゃべる昔話ってどう?

はーいみんな、ローラだよ!

ちがうよ、あのローラちゃんじゃないよ!
私はhisakoの妹だよ! としは四十歳!
ローラなんてよくある名前だよ!

じゃあね、これから、お話をしゃべるよ!

みんな、これはね、本当にあったお話だよ!!


むかし、何でも知ってる王さまがいたんだって。


むかしだから、TVも電話もインターネットもないんだけど、それなのに何でも知ってるの。


その王さまが、ある日、ひとりで、秘密のお昼ごはんを食べ終わったときにね、


お妃さまが部屋に入ってきて、「私の指輪がなくなっちゃった!」っていったの。


でも王さまは、指輪がどこにあるのかわかんなかったの。


王さまが困ってるところに、召使いが食器をさげにきたの。


王さまは「指輪を盗ったの、おまえじゃない?」ってきいたのね。


召使いは「違います」っていって、食器をさげたんだけど、


王さまに疑われたのが悲しくて、もうこの仕事やめようって思って、


やめるまえに、王さまの秘密のお昼ごはんの中身見ちゃおうって思って、


ふたをとったら、白ヘビだったの!


召使いはおどろいたんだけど、


その白ヘビがすごくおいしそうだったの!


だから、食べちゃった!!


そしたらね、窓から小鳥の話が聞こえてきたの。


小鳥がね、「指輪はカモがのみこんだんだよ」っていってるの。


白ヘビを食べたから動物の話が聞こえるようになったんだね!


王さまは、この小鳥の話を聞けなかったんだね。


召使いはそのカモをつかまえて、台所に持っていって、おなかの中見てみたのね。


そしたら本当に指輪があったの!


王さまは「おわびに欲しいもの何でもあげる」っていったのね。


だから召使いは馬とお金をもらって、お城をやめて旅に出たの。


召使いは、もう召使いじゃなくて、ただの若者になったの。


その若者が川のそばを通りかかったら、


魚が草にからまって死にそうになってたの。


だから助けてあげたの。


それから、馬がアリを踏みそうになったときはね、


アリをよけて歩いたの。


それから、子ガラスが巣から落ちてたときはね、


自分の乗ってた馬を殺してえさにしてあげたの!


若者は馬がなくなっちゃったから、歩いて町へ来たの。


そしたらそこで、お姫さまが結婚相手を探してたの。


お姫さまが出す問題ができたら結婚できるけど、できなかったら処刑されちゃうの!


でもお姫さまはすっごいキレイだったから、若者はお姫さまのところへ行ったのね。


お姫さまは若者を海へ連れてって、指輪を海に投げて、


「指輪を拾ってきなさい」っていったの。


若者はびしょぬれになって指輪を探したんだけど、みつからないの。


そしたらね、こないだ助けた魚が指輪をくわえてもってきてくれたの!


これで結婚できるって若者は思ったんだけど、お姫さまは結婚したくなかったから、


こんどは若者を森へ連れていって、キビをいっぱい森じゅうにばらまいて、


「明日の朝までにキビを一粒残らず拾い集めなさい」っていったの。


でもすぐに夜になっちゃって、若者は困って寝ちゃったの。


朝になって目がさめたら、こないだ助けたアリがキビを全部拾ってくれてたの!


これで結婚できるって若者は思ったんだけど、お姫さまは結婚したくなかったから、


「この世の果てまで行って、命の木から、命のリンゴを取ってきなさい」っていったの。


若者は出かけていったんだけど、この世の果てなんてどこにも見つからなかったのね。


若者は疲れ切って、倒れちゃったの。


「もう死んじゃうかも」って思ったの。


そしたらね、こないだ助けた子ガラスが飛んできたの。


カラスはリンゴをくわえてたの!


カラスがね、「この世の果てから、命のリンゴを取ってきましたよ」っていったの!


若者はリンゴを半分食べたの。


そしたらすっごい元気になって、走ってお姫さまのところにもどったの!


お姫さまはすっごいびっくりしたんだけど、ついに結婚する覚悟をきめたの。


そしてお姫さまもリンゴを食べたの。


そしたらお姫さまは、若者のことを、すっごく好きになっちゃったの!!


よかったね!


グリム童話「白ヘビ」です。区切ってあるのを1ページ(一枚)と思っていただければ。

昔話のまわりにあるいろんな正しそうなことや神聖そうなことを、いっさい無視してしまいました。(ついでにいうと、話のすじも少々かえてます。)

でも、このくらいの感じで昔話を聞いたり読んだりするのもいいなと思います。というか、できればそうしたいです。だって、

私はもう疲れたよ!(笑)

*  *  *

この記事を書いた人
たまに、加賀 一
そだ ひさこ

子ども時代はもちろん、大人になっても昔話好き。
不調で落ち込んでいた30代のある日。記憶の底から突如、子ども時代に読んだ昔話の場面がよみがえる。その不思議さに心を奪われて、一瞬不調であることを忘れた。自分は昔話で元気が出るんだと気づいた。

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