昔話・伝説・神話・民話・おとぎ話・童話の違い

2016年4月1日放送のラジオ番組「小澤俊夫 昔話へのご招待」で、新年度ということで基本として、昔話・伝説・神話・民話・おとぎ話・童話の違いを小澤俊夫先生が説明してくださっていました。今まではっきり違いがわからず疑問だったことがやっと解決!しました。
せっかくなので、簡単にまとめてみました。

2018年1月5日の放送で同じ内容を扱っていたので、それも参考に加筆訂正しました。

昔話・伝説・神話・民話・おとぎ話・童話 の解説

昔話

昔話とは、「口伝えで、昔から伝えられてきたおとぎ話(架空の話)」。

時代、場所、人物を不特定に語っている。架空の話。つまり「これから話すことは嘘の話だから信じないでくれよ」と宣言し、話し終わりに「ここまでが嘘の話でした」という意味の結末句をつける。

世界中の昔話がこの特徴を持っている。世界中の人々が誰でも、嘘の話を楽しむ気持ちを持っている

昔話は、いつからあるの?

日本で伝承されている昔話は、室町時代頃(御伽草子が流行った時代)にできた話がとても多い。話によって年齢は違う。
古いものでは8世紀頃のものもあり、古事記に出てくる話(蛇との結婚の話)が民衆のレベルにおりて昔話というふうに伝えられている。
新しい物は江戸時代、200年前くらいにできた話がたくさんある。多くは笑い話。

古代エジプトでは3000年前のパピルスに書かれた「二人兄弟話」という昔話が発見されている。

昔話は、本と口伝えを行ったり来たりする

語り伝えられている昔話を、文筆家がまとめて本にすることがある。御伽草子のように。このとき大抵は描写を加えたりして、語られていたシンプルなものより詳しく書かれる

その本を読んで育った子どもが、大人になって子どもや孫たちに語るときには、シンプルに戻る。これは、子どもたちにわかるように語ってあげようとするため。
詳しく語ると聞き手は混乱するので、伝えやすいようにシンプルに語る。シンプルでなければ昔話は生きてこられなかった。

口伝え(簡単)→ときどき本になる(詳しくなる)→読んだ子どもが大人になって口伝えする(簡単になる)→・・・という行ったり来たりが、何百年も続いているのだそうです。

伝説

時代、場所、人物を特定して語っている。つまり「これから話すことは本当の話だから信じてくれよ」と。土地の歴史などを語っている。伝説は信じられることを欲している。

世界中の民族が、「昔話」と「伝説」、この二種類の話を持っている。

神話

神々が登場する話。それぞれの民族のもとはこうだったんだよ、という話。本当の話として伝えている。

民話

民話という言葉は戦後になって新しくできた言葉。神様が出てくる話が「神話」なのに対し、人間が出てくる話だから「民話」という名前になったらしい。

そして、「昔話=民話」ではない。昔話民話別のもの

1945年に終戦を迎え、戦後になると、昔話にたいしてこんな対応がされた

  • 「そもそも日本の昔話は桃太郎のような侵略の話だ。侵略の話を聞いて育ったから日本は侵略国家になったのだ。」 → アメリカの文化人たちが言い出した
  • 「昔話は田舎の無学で無知蒙昧の人たちが伝えてきたもので、文芸的レベルが低いから、もっとしっかりしたものにしなければいけない。」 → 文学者たちが昔話に手を加え、立派な話にした

この、後者のものが「民話」。そしていつの間にか、「昔話」と「民話」がごっちゃになってしまった。

「現代の昔話」はありえない。昔話は昔のことを語っている。昔話は伝承された話である。

けれど、「現代の民話」はありえる
たとえば「原子爆弾で広島でこんな悲しいことがありました」ということを民衆の間で伝えれば、これは現代の民話になりうる。事実を含んだ民話がありえる。もちろん、創作もありえる。

本として発表するのではなく、なんとなく口伝えになる。週刊誌に載って、それが広がるとか。
口裂け女:あれは本当に口伝えなのかというのが研究者の間で問題になったが、もとは週刊誌か何かに載った話だったらしい。

作ったものが印刷されて広まり → 印刷を離れて → いつの間にか口伝えになる、というような。これが民話。昔話ではないけど、民話にはなりうる。

おとぎ話

これは話の種類ではなく性質。嘘の話、架空の話。(昔話は、おとぎ話の一種といえる)

童話

たいては創作を指す。
(広く、子供向けの話という意味に捉えれば、昔話に子供向けの話もあるのでそう言える話もある)

「グリム童話」は、グリム兄弟が昔話を集めて、少し手を加えたもの。純粋な昔話ではないが、創作童話でもない。昔話の性質を8割くらい持っている

まとめ

今まで、昔話と民話の違いが、いくら調べてもはっきりわからなかったのですが、はじめて納得できました。

民話は戦後にできた言葉で、文学者が昔話に手を加えたもの」ということでした。

昔話は身近な人の言葉によって「語り」つがれてきたもの、民話は書かれて印刷された「読む」もの、と考えていいのかなと思います。

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