『不実な妹』は、邪魔になった兄を殺そうとする妹の話

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世界中の昔話の話型を集めた本(国際昔話話型カタログ)から、 「面白そう!」「こんな話があったの?」という話型を紹介する記事です。

今回は「不実な妹」のあらすじを紹介します。世界のあちこちにある同じタイプの話の筋の要約なので、個々の話とはタイトルや細かいところが違うことがあります。

昔話というより、サスペンスなドラマを見ているような内容でした。アイテムやエピソードが昔話っぽいだけで、少し作り変えたら現代のストーリーとして使えそうです。

不実な妹 あらすじ

この話型は「不実な妹」(315番)という話型です。

語り婆
語り婆

兄と妹が一緒に家を出るの。貧しくて追い出されたか何かね。

語り婆
語り婆

あるとき兄が、たくさんの強盗たちを殺すの。だけど1人は怪我をしただけだったのよ。それに兄は気づかないの。

語り婆
語り婆

妹はこっそりその強盗を助けるの。そしていつの間にか2人は恋人同士になってしまうの。

語り婆
語り婆

妹は兄を追い払おうと考えるのよ。

語り婆
語り婆

妹は病気のふりをするの。そして兄に「私の病気には危険な動物たちのミルクしか効かないの。取ってきて」と嘘を言うの。兄はミルクを取りに、危険な動物のもとに向かうの。

語り婆
語り婆

でも危険な動物たちは、兄に危害を加えなかったのよ。妹の計画は失敗に終わるの。

語り婆
語り婆

すると妹は強盗と一緒に、兄を殺そうとするの。

語り婆
語り婆

そのとき! 兄は動物たちにもらった笛を吹くの。すると、笛をくれた動物たちがあらわれて、強盗を引き裂くのよ。妹は投獄されるの。

語り婆
語り婆

のちに兄は旅に出るの。そして旅先で竜を倒してお姫様を救い、お姫様と結婚するのよ。良かったわね。

語り婆
語り婆

で、妹が宮廷に連れてこられるの。身内だから放っておけなかったのかしら。

語り婆
語り婆

だけど妹は、兄のベッドに毒の骨を仕込んで、またも兄を殺そうとするのよ。

語り婆
語り婆

兄が死ぬと、動物たちがあらわれて兄の体をなめるの。毒の骨は兄の体から取り除かれて、兄は生きかえるのよ。よかったわ。

語り婆
語り婆

妹は死刑よ。

そだ
そだ

国際昔話話型カタログ p169 315 「不実な妹」を参考にしました。

カタログからのあらすじ補足

妹が二度目(投獄される前)に兄を殺そうとする場面。兄を絹糸で縛る、または、魔法の水車小屋(動物たちが閉じ込められている)に行かせる、とあります。

そして兄が笛を吹き、動物たちがあらわれるときには、水車小屋から出てくるとあります。

動物たちがいつ水車小屋に閉じ込められたのかは、カタログからはわかりません。

記憶からのあらすじ補足

そだ
そだ

この話は読んだことがないですね……。

登場者などのバリエーション

カタログから、登場者・アイテム・出来事などのバリエーションを。

  • 強盗たち(悪魔たち、巨人たち、竜たちなど)
  • ミルク(肝臓)
  • 投獄される(罪を悔やんで泣き、その涙で樽をいっぱいにしなければならない)

現代のドラマを見ているような

妹は結局、最初に兄と一緒に家を出た後、兄とは敵対する立場になって、富も結婚もなしに死刑になります。

ドラマや小説ではありそうな話だけど、昔話としてはあまり普遍的じゃないような気がします。

ヘンゼルとグレーテルのように2人で魔女を倒して宝物を持って帰ってくるとか、同じ境遇だった2人が同じように幸せになる話ではないのが、子ども向けではないのかなと感じました。だから読んだ記憶がなかったのかも。

まとめ

「不実な妹」のあらすじをご紹介しました。

出来事は昔話らしいファンタジーな雰囲気だけど、要は「妹が邪魔な兄を殺そうとする」話でした。現代風に書きかえられる可能性を感じます。

そだ
そだ

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昔話について、私の情報源はこのあたりです

ヨーロッパの昔話――その形と本質 (岩波文庫) マックス・リュティ (著), 小澤 俊夫 (翻訳)
昔話の語法 (福音館の単行本) 小澤 俊夫 (著)
小澤俊夫 昔話へのご招待|FM FUKUOKA (エフエム福岡)ラジオ番組
国際昔話話型カタログ 分類と文献目録 ハンス=イェルク・ウター (著), 小澤 俊夫 (監修), 加藤 耕義 (翻訳) 【カタログ

あと、昔読んだ本の記憶。書名とか昔過ぎてわからないです。

*  *  *

この記事を書いた人
たまに、加賀 一
そだ ひさこ

子ども時代はもちろん、大人になっても昔話好き。
不調で落ち込んでいた30代のある日。記憶の底から突如、子ども時代に読んだ昔話の場面がよみがえる。その不思議さに心を奪われて、一瞬不調であることを忘れた。自分は昔話で元気が出るんだと気づいた。

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コメント

  1. 文緒 より:

    久子さん、お久し振りです。
    何だか不穏な昔話ですね。
    子供の頃に聞かされたらトラウマになる以前に理解できないかも。
    まだ人を好きになることがピンとこない年ですし。

    • 文緒さん、お久しぶりです。
      ほんと、不穏な話ですよね。
      大人の間だけで語られていた昔話というのもあるそうで、子ども向けというよりはそちらに近いのか?と思います。
      ごく普通の娯楽として現代のテレビドラマや小説のように楽しまれていた物語なのかなぁと。

      男性の間だけで・女性の間だけで語られている話もあるらしいとかで、こういうものは研究者が知ることがとても難しい(教えてもらえない)というのを聞いたことがあります。たぶんラジオで。

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