『踊ってすり切れた靴』は、悪魔に魅入られたお姫さまの話

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世界中の昔話の話型を集めた本(国際昔話話型カタログ) から、「面白そう!」「こんな話があったの?」という話型を紹介する記事です。

今回は「踊ってすり切れた靴」のあらすじを紹介します。世界のあちこちにある同じタイプの話の筋の要約なので、個々の話とはタイトルや細かいところが違うことがあります。

「本当は怖い……」に含まれることもある、不思議で、美しく妖しい雰囲気の物語です。

踊ってすり切れた靴 あらすじ

この話型は「踊ってすり切れた靴」(306番)という話型です。グリム童話に含まれている物話です。

語り婆
語り婆

お姫様たちの靴が毎晩ボロボロになっているのよ。寝室で寝ているだけのはずなのにね。王様はその謎の理由を知りたくて、おふれをだすの。

語り婆
語り婆

謎を解いた者を姫と結婚させる。ただし失敗したら首を切る」とね。

語り婆
語り婆

ある若者が、自分の姿を見えなくする魔法の道具を手に入れるの。そして若者は姫の謎を解くためにお城に行くのよ。お姫様たちは若者に睡眠薬を飲ませようとするんだけど、若者は騙されずに、眠ったふりをして夜になるのを待つの。

語り婆
語り婆

夜になるとお姫様たちは、寝室の床に現れた階段を下りていくの。若者は自分の姿を見えなくしてついていくのね。するとなんと……

語り婆
語り婆

お姫様たちは不思議な地下の世界のお城で、王子の姿をした悪魔と一晩中踊っていたのよ。

語り婆
語り婆

若者は地下の世界の品物を自分の服に隠して持ち帰るの。

語り婆
語り婆

翌朝若者は王様に、ゆうべ見たことを話して、証拠として地下の世界から持ってきたものを見せるの。お姫様は若者の言ったことが本当だと認めて、若者と結婚するのよ。

そだ
そだ

国際昔話話型カタログ p159 306 「踊ってすり切れた靴 」を参考にしました。あと記憶も少しね。

記憶からのあらすじ補足

お姫様は12人で、夜は外から鍵をかけられた大広間で一緒に寝ます。
外には出られないはずなのに、昨夜は新しかったお姫様たちの靴が翌朝にはボロボロになっている。王様はこの理由がわからない。

兵士は老婆に魔法のマントをもらいます

お姫様たちは兵士に、睡眠薬入りのワインを飲ませようとしますが、兵士は飲み干したふりをしてワインを床にこぼします。「ワインを飲んではいけない」ということは老婆に教わって知っていました。

夜中にお姫様たちは地下の世界へ入っていきます。兵士も姿を消してついていきます。地下の世界の街路樹は、金の葉、銀の葉、ダイヤモンドの葉がついています。兵士はそれぞれの枝を折り取ってマントの下に隠します。

湖に着くと美しい王子12人がそれぞれの小舟でお姫様たちを城に連れていきます。王子たちは魔法をかけられていた(呪われていた)ようです。

最後に兵士が結婚相手に選ぶのは、自分は若くないからという理由で、一番年上のお姫様です。

そだ
そだ

※私が以前に読んだ記憶をもとに書きました。書名とか覚えていないので確認しておらず、少々不正確かもしれません。

登場者などのバリエーション

カタログから、登場者・アイテム・出来事などのバリエーションを。

  • 若者(兵隊、ジプシー、仕立屋、羊飼い、農夫など)
  • 魔法の道具(靴、帽子、オーバー、杖など)
  • 悪魔(竜、ほかの超自然の存在など)
  • 証拠の品(小枝、リンゴ、指輪、姫の服の一部など)

とにかく不思議さに心を奪われた物語でした

私が子ども時代に本を読んだ記憶では、王子たちが本当は悪魔だったとは書いてありませんでした。50歳を過ぎてからカタログを読んで、初めて「あれって悪魔だったんだ……」と知りました。(竜や、他の超自然の存在のこともあるようです)

子どものときにこの話を本で読んだのですが、書いてあることが不思議すぎて場面を想像するのが難しく不思議だと強く思う気持ちとともに私の記憶に残った物語です。

とくに、床にベッドが沈んで階段が現れるというところ、いったいベッドはどこへ行くんだろうと悩んだように記憶しています。朝になったらどうやってベッドが戻ってくるのか、とか。

まとめ

「踊ってすり切れた靴」のあらすじをご紹介しました。

ちなみにインドでは、

語り婆
語り婆

王子の妻が毎晩異界へ行って神の前で踊らなければならないのを、夫が救済するのよ。

という類話があるそうです。

そだ
そだ

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昔話について、私の情報源はこのあたりです

ヨーロッパの昔話――その形と本質 (岩波文庫) マックス・リュティ (著), 小澤 俊夫 (翻訳)
昔話の語法 (福音館の単行本) 小澤 俊夫 (著)
小澤俊夫 昔話へのご招待|FM FUKUOKA (エフエム福岡)ラジオ番組
国際昔話話型カタログ 分類と文献目録 ハンス=イェルク・ウター (著), 小澤 俊夫 (監修), 加藤 耕義 (翻訳) 【カタログ

あと、昔読んだ本の記憶。書名とか昔過ぎてわからないです。

参考リンク

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この記事を書いた人
たまに、加賀 一
そだ ひさこ

子ども時代はもちろん、大人になっても昔話好き。
不調で落ち込んでいた30代のある日。記憶の底から突如、子ども時代に読んだ昔話の場面がよみがえる。その不思議さに心を奪われて、一瞬不調であることを忘れた。自分は昔話で元気が出るんだと気づいた。

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