『3人のさらわれた姫』は、地下世界からお姫さまを救い出して結婚する話

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世界中の昔話の話型を集めた本(国際昔話話型カタログ)から、 「面白そう!」「こんな話があったの?」という話型を紹介する記事です。

今回は「3人のさらわれた姫」のあらすじを紹介します。世界のあちこちにある同じタイプの話の筋の要約なので、個々の話とはタイトルや細かいところが違うことがあります。

救い出す王子も3人兄弟ですが、なんと、兄たちの嫉妬心によって弟が地下世界に置き去りにされてしまうのです。がんばれ弟!

3人のさらわれた姫 あらすじ

この話型は「3人のさらわれた姫」(301番)という話型です。導入部は異なった3つの型があり、共通の主部に続いています。

語り婆
語り婆

王様の庭に金のリンゴがなる木があるんだけど、怪物がそれを盗みに来るの。3人の王子たちは順番に怪物を待ち伏せるんだけど、末の弟だけが怪物に傷を負わせることができたの。
3人の王子たちが怪物の血の跡をつけていくと、血の跡は井戸に続いていたのよ。

そだ
そだ

今のは導入部(2)です。次から主部ね。

語り婆
語り婆

二人の兄たちは末の弟を井戸の中へ下ろすの。井戸の底に広がっている世界で、弟は怪物を倒して、3人のお姫様を救い出すのよ。

語り婆
語り婆

弟が3人のお姫様を連れて戻ってくると、二人の兄たちはまずお姫様たちを引き上げるの。そして弟を井戸の底へ置き去りにするのよ。

語り婆
語り婆

兄たちはお姫様たちに、「自分たちを救い出したのは兄たちだ」と無理やり言わせるの。
そしてお姫様たちと結婚しようとするのよ。だけどお姫様たちは結婚式を遅らせるのね。

語り婆
語り婆

井戸の底に残された弟は、精霊に飛ぶ力をもらって地上に戻るの。

語り婆
語り婆

結婚式の日に、地上に戻った弟が城にあらわれるんだけど、投獄されてしまうのよ。でもお姫様たちは、それが自分を救ってくれた末の弟だとわかるの。真実が明るみに出るのね。
二人の兄たちは罰を受けるのよ。

語り婆
語り婆

末の王子は、末のお姫様と結婚するの。そしてやがて王になりました。めでたしめでたしね。

そだ
そだ

国際昔話話型カタログ p150 301 「3人のさらわれた姫」を参考にしました。

カタログからのあらすじ補足

まず、導入部の残り2つを。

語り婆
語り婆

導入部(1)
王が3人の娘を地下世界に追放するの。そして3人兄弟がお姫様たちを見つけに行くのよ。

語り婆
語り婆

導入部(3)
魔法的誕生の子どもが、並外れた力を持った若者に成長して、冒険の旅に出るの。そして、並外れた力を持った人物を2人見つけて仲間になるの。
彼らが食事の支度をすると、小さな男に2度も邪魔されるんだけど、3度めは若者が男を捕まえて罰するの。すると男は地下世界への入り口を教えてくれるのよ。

記憶からのあらすじ補足

金のリンゴを盗みに来る怪物を待ち伏せするとき、二人の兄はどちらも眠ってしまいます。起きていられたのは弟だけ。

地下の世界を行くと、水晶のお城があり、そこにいるお姫様の助言で、弟はそのお城の怪物を倒すことができます。お姫様は弟に結婚してほしいと言うのだけれど、弟はもっと先へ歩いていきます。

すると今度は銀のお城があり、さっきと同じように事が運びます。弟はもっと先へ歩いていきます。

すると今度は金のお城があり、さっきと同じように事が運びます。弟が怪物を倒したあと、お姫様は自分の髪を切って弟に贈ります

弟は3人の姫を連れて井戸の下へ戻って来ます。兄たちは籠を下ろしてお姫様たちを引き上げますが、弟をそこへ置き去りにして帰ってしまいます。

弟は井戸の底にいるおばあさんから鷲を借してもらいます。鷲は肉を食べている間は飛ぶことができるのです。
弟は鷲の背中に乗り、細かく切った肉を与えながら地上を目指しますが、あともう少しというところで肉がなくなってしまいます。弟は仕方なく、自分のふくらはぎの肉をナイフで切り取って鷲に与えます。

地上についた弟がふくらはぎの痛みに苦しんでいると、鷲が肉を吐き出してふくらはぎにくっつけてくれます。

そだ
そだ

※私が以前に読んだ記憶をもとに書きました。書名とか覚えていないので確認しておらず、少々不正確かもしれません。(イタリアの昔話「地下の世界」のようです。)

登場者などのバリエーション

カタログから、登場者・アイテム・出来事などのバリエーションを。

  • 王が3人の娘を地下世界へ追放する(3人の娘が怪物にさらわれて地下世界へ連れて行かれる)
  • 3人兄弟(超自然的主人公と、並外れた力を持った仲間)
  • 怪物(竜、ヘビなど)
  • 魔法的誕生の子ども(熊の息子、馬の息子、涙から生まれた子どもなど)
  • 冒険(運を求めて)
  • 小さな男(こびと、悪魔、巨人)
  • 2度邪魔される(食事を食べてしまい、料理した者を殴る)
  • 井戸(縦穴、洞窟)
  • (姫の助けで、武器を使って、自分の力で、魔法で)打ち負かす
  • 怪物(竜、悪魔)
  • 主人公を置き去りにする(ロープを切る、籠をひっくり返す)
  • 精霊が飛ぶ力を授けてくれる(自分の肉を与えた鳥の助けで、自分が植えたつるを登り、など)
  • (1年間)遅らせる
  • 真実が明るみに出る(主人公が姫からの贈り物を見せる)
  • 罰せられる(追放される、殺される)

自分のふくらはぎの肉を切って与えるという衝撃

この話の何がいちばん印象深いかと言うと、主人公が鷲の背に乗って井戸の中を地上へ向かう場面です。小さく切った肉を一切れずつあげながらゆっくり上昇していき、最後の最後で肉が足りなくなって、自分のふくらはぎを切って与えて、そのおかげで地上へ戻れる。

地上で鷲がふくらはぎの肉を吐き出してくっつけてくれるという場面も、泣けました……。

まとめ

「3人のさらわれた姫」のあらすじをご紹介しました。

一部の類話では、

語り婆
語り婆

主人公は白い動物(雄羊・羊・雄ヤギ・馬・ライオン・ヘビ)に乗って地上へ行くのを、間違えて黒い動物に乗ってしまうの。それで地下世界のずっと奥へ連れて行かれるのよ。でもそのあと、ちゃんと白い動物に乗って地上へ戻るの。

という話があるそうです。

白ヘビに乗るのって難しそうね。

そだ
そだ

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昔話について、私の情報源はこのあたりです

ヨーロッパの昔話――その形と本質 (岩波文庫) マックス・リュティ (著), 小澤 俊夫 (翻訳)
昔話の語法 (福音館の単行本) 小澤 俊夫 (著)
小澤俊夫 昔話へのご招待|FM FUKUOKA (エフエム福岡)ラジオ番組
国際昔話話型カタログ 分類と文献目録 ハンス=イェルク・ウター (著), 小澤 俊夫 (監修), 加藤 耕義 (翻訳) 【カタログ

あと、昔読んだ本の記憶。書名とか昔過ぎてわからないです。

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この記事を書いた人
たまに、加賀 一
そだ ひさこ

子ども時代はもちろん、大人になっても昔話好き。
不調で落ち込んでいた30代のある日。記憶の底から突如、子ども時代に読んだ昔話の場面がよみがえる。その不思議さに心を奪われて、一瞬不調であることを忘れた。自分は昔話で元気が出るんだと気づいた。

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