![オットー・ウベローデによるラプンツェルの挿絵](https://blog.mayoi.tokyo/wp-content/uploads/2021/12/20211212-800x450.jpg)
世界中の昔話の話型を集めた本(国際昔話話型カタログ)から、 「面白そう!」「こんな話があったの?」という話型を紹介する記事です。
今回は「塔の中の乙女」のあらすじを紹介します。世界のあちこちにある同じタイプの話の筋の要約なので、個々の話とはタイトルや細かいところが違うことがあります。
グリム童話「ラプンツェル」として知られています。しかし、この話型とグリム童話のラプンツェルとは少々違う展開になっています!
塔の中の乙女 あらすじ
この話型は「塔の中の乙女」(310番)という話型です。「ラプンツェル」や「ペトロシネッラ」というタイトルで知られている話です。「ラプンツェル」としてグリム童話に含まれている物語です。
![語り婆](https://blog.mayoi.tokyo/wp-content/uploads/2021/12/34ca90167f35262ed7310f82de435fa1.jpg)
ある妊婦が、魔女の家の庭に植えてあるハーブを盗んで、魔女に見つかってしまうのよ。
それで無理やり魔女に約束させられるの。
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私の子どもが生まれたら、魔女に差し上げます って。
![語り婆](https://blog.mayoi.tokyo/wp-content/uploads/2021/12/34ca90167f35262ed7310f82de435fa1.jpg)
やがて女の子が生まれて、少し大きくなると、魔女が迎えに来るの。
魔女は女の子を塔のてっぺんに閉じ込めてしまうのよ。
魔女が塔に入るときには、女の子の長い髪を窓から垂らさせて、それを登ってくるの。
![語り婆](https://blog.mayoi.tokyo/wp-content/uploads/2021/12/34ca90167f35262ed7310f82de435fa1.jpg)
あるとき王子が、塔のてっぺんの女の子を見つけるの。たちまち二人は恋に落ちるのよ。
![語り婆](https://blog.mayoi.tokyo/wp-content/uploads/2021/12/34ca90167f35262ed7310f82de435fa1.jpg)
女の子は魔女に眠り薬を飲ませるの。
そして王子は女の子の髪を登ってきて、愛を交わすのよ。
![語り婆](https://blog.mayoi.tokyo/wp-content/uploads/2021/12/34ca90167f35262ed7310f82de435fa1.jpg)
ところが、魔女がこれに気づいて、王子の次の訪問を防ごうとするの。
でも魔女はうっかり、2人が助かる方法を喋ってしまって、女の子に立ち聞きされてしまうの。
![語り婆](https://blog.mayoi.tokyo/wp-content/uploads/2021/12/34ca90167f35262ed7310f82de435fa1.jpg)
「3つのオークの実を使って変身すれば逃げることができる」ってね。
![語り婆](https://blog.mayoi.tokyo/wp-content/uploads/2021/12/34ca90167f35262ed7310f82de435fa1.jpg)
女の子は王子と一緒に逃げるの。
魔女は追って来るんだけど、2人は逃げて、魔女は殺されるのよ。
![語り婆](https://blog.mayoi.tokyo/wp-content/uploads/2021/12/34ca90167f35262ed7310f82de435fa1.jpg)
そして、王子は女の子と結婚するの。めでたしめでたしね。
![そだ](https://blog.mayoi.tokyo/wp-content/uploads/2021/11/02-1.png)
国際昔話話型カタログ p160 310 「塔の中の乙女」を参考にしました。
カタログからのあらすじ補足
女の子の名前は、盗んだハーブにちなんで「ペトロシネッラ」「ラプンツェル」などと呼ばれる。
女の子の髪は金髪である。王子が女の子を見つけたきっかけは、女の子の髪が陽の光を浴びて輝いていたから。
女の子は「会話を立ち聞きし」とあるので、魔女が誰かとオークの実のことを話していたようです。誰とは書いてないのでわかりません。
ラジオ番組からのあらすじ補足
グリム童話のラプンツェルです。
夫婦の家の裏側に魔女の庭があった。妊娠中の奥さんは魔女の庭のラプンツェルの葉っぱをどうしても食べたくなって死にそうになる。
夫は魔女の庭に入り込んでラプンツェルを盗む。しかし魔女に見つかってしまい、許してもらうかわりに生まれた子どもを魔女にやらねばならなくなる。
やがて女の子が生まれると、魔女がやってきて「ラプンツェル」という名前をつけて連れて行く。ラプンツェルは美しく育つ。彼女が12歳になると、魔女はラプンツェルを高い塔の中に閉じ込める。塔にはドアも階段もなく、窓が一つあるだけ。
王子が塔のそばを通りかかると、窓辺で歌を歌っているラプンツェルを見つける。そして美しいラプンツェルのとりこになる。塔に入る方法がわからなかったが、あるとき魔女がラプンツェルの髪を登っていくのを見る。
夜になると王子は塔の窓の下へ行ってラプンツェルに声をかけ、髪を垂らしてもらい、登っていく。
ラプンツェルは登ってきたのが知らない男の人だったので驚いたが、すぐにこの王子を好きになった。王子はラプンツェルに「結婚してください」と言った。ラプンツェルは「はい」といい、毎日塔で会う約束をした。2人はしばらくの間、夫婦のように楽しい時を過ごした。
![そだ](https://blog.mayoi.tokyo/wp-content/uploads/2021/11/02L.png)
この先がちょっと違うのよね。
ある日ラプンツェルがうっかり、「ゴーテルおばさん、あなたを引き上げるときは、あの若い王子様よりもずっと重いのはどうしてかしら」と言った。
怒った魔女はラプンツェルの長い髪を切り、ラプンツェルを荒れ野に追い出した。ラプンツェルは荒れ野で暮らしながら、双子の子どもを生んだ。
魔女はラプンツェルの髪を窓の留め金にまきつけ、王子が来るとその髪を垂らした。登ってきた王子は、ラプンツェルがいないことを知ると絶望して塔から飛び降り、いばらが目に刺さって失明し、森をさまよって泣き暮らす。
3年ほど経って、王子が荒れ野に迷い込み、ラプンツェルと再開する。ラプンツェルの涙が王子の両目に入り、王子の目が治る。王子はラプンツェルと子どもたちを自分の城に連れていき、結婚する。
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![そだ](https://blog.mayoi.tokyo/wp-content/uploads/2021/11/02L.png)
グリム童話のラプンツェルについて、小澤先生の解説です。
「塔に閉じ込められる」というのは、昔あった習慣の名残りだろうといわれています。ヨーロッパにも日本にもあったそうで、日本では「娘小屋」というのだそうです。
日本の場合、年頃の女の子を集めて、一軒の家に一週間ほど一緒に生活する。そこにおばあさんが一人いて、性教育や、女の子としての教育をしてあげる。という習慣が昔はあったそうです。(男性にも同じように「若者小屋」があったそうです。)
失明を涙が治すというモティーフは日本にもあります。(「お月お星」という話)
辛抱強く苦しみを超えて幸せになるという話は、ドイツ人がとても好む話で、ラプンツェルはドイツでとても人気があるそうです。
記憶からのあらすじ補足
いろんな国の話が部分的に紹介されているのを、昔話関連の本で読みました。
女の子は家具たちにマカロニを一口ずつあげて、魔女に何も言わないように頼む。しかしゴミ箱(?)にマカロニをあげ忘れたために、ゴミ箱が魔女に喋ってしまう。とか。
女の子は王子を椅子に変えて隠すと、魔女はその椅子に座ってしまう。女の子は王子を縫い針に変えて隠すと、魔女は「歯に挟まったものを取るため」にその針を使う。王子は「もう限界だ、逃げよう」と言う。とか。
フランスの女性文学者(?)が後半を少し悲劇的に書きかえたものが有名になってしまって、グリム童話に取り入れられたのはそちらのほうだ……というのもどこかで読みました。読んだ気がします。たしか。
![そだ](https://blog.mayoi.tokyo/wp-content/uploads/2021/11/02L.png)
※私が以前に読んだ記憶をもとに書きました。書名とか覚えていないので確認しておらず、少々不正確かもしれません。
登場者などのバリエーション
カタログから、登場者・アイテム・出来事などのバリエーションを。
- ハーブ(果実)
あれ、こんな大人の話あるんだ……
この話、小さいときに読んだ記憶がありませんでした。読んだけど忘れてしまっていたのかもしれませんが。
けっこうな大人になってグリム童話の初版を文庫本で読んだとき、この話をちゃんと知ったような気がします。「おばさんが王子さまより重いのはなぜかしら」ではなく「私の服がきつくなったのはなぜかしら」でした。こんな大人の話があるんだ……と意外な感じがしたのを覚えてます。
まとめ
「塔の中の乙女」のあらすじをご紹介しました。
ディズニーで映画になった「塔の上のラプンツェル」はストーリーがだいぶアレンジされているので、昔話のラプンツェルではなくなっています。
ラプンツェルの長い髪と、ラプンツェルの涙が怪我を治すという魅力的なモチーフを使った、別の物語ですね。
昔話ってこういうちょっと思いつかないようなモチーフがあるので、やっぱりいいなぁと思います。
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ぜひ、他の記事も読んでね!
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ヨーロッパの昔話――その形と本質 (岩波文庫) マックス・リュティ (著), 小澤 俊夫 (翻訳)
昔話の語法 (福音館の単行本) 小澤 俊夫 (著)
小澤俊夫 昔話へのご招待|FM FUKUOKA (エフエム福岡) 【ラジオ番組】
国際昔話話型カタログ 分類と文献目録 ハンス=イェルク・ウター (著), 小澤 俊夫 (監修), 加藤 耕義 (翻訳) 【カタログ】
あと、昔読んだ本の記憶。書名とか昔過ぎてわからないです。
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