世界中の昔話の話型を集めた本(国際昔話話型カタログ)から、 「面白そう!」「こんな話があったの?」という話型を紹介する記事です。
今回は「竜退治をする男」のあらすじを紹介します。世界のあちこちにある同じタイプの話の筋の要約なので、個々の話とはタイトルや細かいところが違うことがあります。
竜退治が素材の昔話は世界中にたくさんあります。ファンタジーの王道という感じですね。
竜退治をする男 あらすじ
この話型は「竜退治をする男」(300番)という話型です。
不思議な犬を連れた若者が町へやってきて、王様の娘が竜の生け贄にされることを知るの。竜は毎年、乙女を生け贄に要求しているのよ。その年はお姫様の番だったのね。
王様は「娘を救った者に、娘を与える」とおふれをだしているの。
お姫様が生け贄になる日、若者はお姫様と一緒に竜が来る場所へ行くの。
お姫様は若者を眠らせて、若者の髪の毛に自分の指輪を結びつけるのよ。
若者が目を覚ますと、竜があらわれるの。若者は犬とともに竜を打ち負かして、竜の頭を切り落とし、舌を切り取って持っておくのね。
そしてなんと「一年たったら戻ってくる」とお姫様に約束して、どこかへ行ってしまうのよ!
するとペテン師があらわれて、竜の頭を持って帰ってお姫様を脅迫するの。お姫様は「私を救ったのはペテン師です」と言わされるのよ。ペテン師はお姫様との結婚を王様に要求するの。
だけど、お姫様は王様に頼むの。「結婚式を一年後にしてください」って。
一年後、まさにペテン師とお姫様の結婚式の日に、若者が戻ってくるのよ。若者は犬をお城へ行かせて、王様のテーブルからごちそうを取って来させるの。それで若者は結婚式へ呼び出されるのよ。
若者は自分が持っておいた竜の舌を王様に見せるの。お姫様を救ったのは本当は若者だったと証明されて、若者はお姫様と結婚するの。
ペテン師は死刑ね。
国際昔話話型カタログ p148 300 「竜退治をする男 」を参考にしました。
記憶からのあらすじ補足
若者が町へ来たとき、人々はみな喪に服しています。
若者が結婚式にあらわれると、退治した竜の首が運ばれてきます。若者はその竜の口をあけて、自分が持っておいた舌をくっつけてみせます。そして若者が竜退治をした男だと証明されます。
※私が以前に読んだ記憶をもとに書きました。書名とか覚えていないので確認しておらず、少々不正確かもしれません。
登場者などのバリエーション
カタログから、登場者・アイテム・出来事などのバリエーションを。
- 竜(頭が7つある)
- 指輪(リボン)
- 舌を切り取る(歯をとっておく)
- 一年(三年)
- ペテン師(御者)
どうして立ち去ってしまうの?
髪に結び付けられた指輪は、若者が竜を退治した人物だと証明するために使われていません。直接ストーリーに関係がないのですが、たぶんこういうことだと思います。
機能を失ったままの贈物は、主人公がまさに天与の特権をもち、その孤立性にもかかわらず、かくれた力と接触をたもった存在であることを示している。
ヨーロッパの昔話 その形と本質 p142 無効力のモティーフ
それから。
私がこの話でいちばん気になるのは、若者は竜を退治したあと、なぜ去ってしまうのかということ。以前この話をどこかで読んだときには、なぜすぐに結婚せずに立ち去るのか理由が説明されていませんでした。
しかもその話では若者は結婚式当日ではなく、数日前に帰って来ているのに、結婚式の当日まで宿に泊まっています。そして当日になってやっと行動を起こすんです。
何かあって当日までに死んだらどうするんだよ、と気が気ではありませんでした。
まとめ
「竜退治をする男」のあらすじをご紹介しました。
個人的にモヤモヤした記憶のある話です。最近になってやっと、もしかしたら若者は旅の途中?旅の目的をまだ果たしていなかったのかも?と思い付きました。
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参考リンク
西洋の竜(ドラゴン)は退治される対象なのに対し、日本の竜は水神などと呼ばれることがあります。
同じ「竜」という言葉が使われていますが、意味としては別々のもののようです。
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