忘れられないお話「やぶれたおどりぐつ」。
「踊ってすり切れた靴」とも。やぶれたおどりぐつというのは、子供向けの本にあったタイトルを覚えたから。んでそのまま大人になった。
具合が悪くて気持ちが沈んでいたとき、ふうっとよみがえってきたのがこの「やぶれたおどりぐつ」というお話を読んだ記憶。そのときに私の中にできたイメージが数十年後にふいに思い出されようとは、、、。これはとても嬉しい出来事でした。家で本を読むのは幸福な時間だったから。
このお話は独特で、読んでいてもイメージできない個所があり(どうしてそうなるのか仕組みがわからず、頭の中で無理矢理処理して次の場面に行く)、そこに対する謎の気持ちがあったから記憶により強く残っていたのかもしれません。
昔話は聞き手のイメージにお話を委ねるもの(だと思う)ので、「やぶれたおどりぐつ」もイメージしやすいものでお話が作られているようです。
その単語と短文を、拾い出してみました。(小学館文庫『1812初版グリム童話〈下〉 (小学館文庫)』グリム兄弟・乾由美子訳 より)
12の寝床
眠っている間広間の扉は鍵と閂で閉じられていた
靴
夜中踊っていたようにすり切れていた
王さまのおふれ
王子
小部屋
何一つ秘密にはできないように扉は開けられていた
貧しい兵士
おばあさん(知恵を授けてくれる)
葡萄酒
マント(姿を隠せる)
杯
衣装箪笥
長持
小箱
お化粧
眠り薬
末のお姫さまはおかしな気持ちになる
寝床が地の中に沈み、落とし戸が開く。お姫さまたちは下に降りて行く
末のお姫さまの裾を、ほんの少し踏みつける
立派な並木道
木という木の葉はみな銀
木という木の葉はみな金
木という木の葉はみなダイヤモンド
枝を折る
末のお姫さまは驚く
大きな川のほとり
小舟が12艘、美しい王子がひとりずつ
あかあかと明かりをともした美しいお城
楽しげな音楽
地下の国の王子たち
イメージできなかったのは「寝床が地の中に沈み落とし戸が開き、お姫さまたちが下に降りて行く」という場面。昔読んだ時は ドーンと音がして寝台が沈み みたいな文だった気がするのですが、とにかくそこがわかりませんでした。だって、沈んだ後に戸が開く??
その謎と、地下の国という冷たい感じと、美しさ、不思議さ、それが独特の記憶になっていたみたいです。
こんなお話を作りたい。
余談。
昔話の世界を手軽に味わうべく、それらから単語のみを拾い出す事はあったけれど、そうするとかえってイメージが失われてしまうことに気がつきました。「12人、お姫さま、寝床、落とし戸、裾」みたいにしてしまうと「それが何?」って感じになっちゃう。ひとまとまりのイメージ、で拾い出すのが正解かも。
*
昔話の特徴などについては、別サイトの「昔話の様式ってこんな感じ」、「文献を自分なりに解釈してみた」にも書いています。
*
2021.12 追記

コメント