【おにぎりみたいなお話作り】スイッチ

主人公の役目「筋を進めるための行動」を仮に『スイッチ』と呼んでみると、さらにその意味がわかりやすくなります。電灯のスイッチのスイッチです。(これをスイッチと呼ぶのはどこかで読んだ事のように思うのだけれど、思い出せない、すみません)

スイッチというのは、押し方はどうでも、それを押せば電灯がつきます。とにかく押せば良いのです。
主人公だからカッコよくスイッチを押さなくてはいけないなどということはありません。失敗の末にようやく押しても、うっかり間違えて押してしまっても、それがスイッチだと知らずに押してしまっても良いのです。
主人公だけに限らず、登場人物の誰もがそれぞれのスイッチをどんなふうにでも押すことができます。
このへんに私はとくに面白さを感じています。

「登場人物にはリアルな背景はない、心理描写もしない」という事だけを聞くと、つまらない人物たちのお話しかできないように思えてしまいます。しかし実際にはそうではありません。
登場人物たちはその個性によって様々な行動をします。心理描写はできなくても「見えていることを描写する」事はできますから、その見えている様々を描写すれば良いのです。

たとえば【道で出会ったお爺さんに食べ物をくれと頼まれて、一人目と二人目はそれに応じないけれど主人公である三人目は自分のお弁当を分けてあげる】というエピソード。この主人公は親切な人物なので、聞き手はお爺さんがどんな良い贈り物をするのかと期待を抱きます。

しかし、もしこのエピソードを【一人目と二人目はお弁当を分けてあげるけれど、主人公である三人目はそうしない】というふうに変えた場合、このけちんぼな主人公の運命はどうなるでしょう。彼が主人公であるからには、どうあってもこの行動から贈り物を受け取らなくてはなりません。
聞き手は「いったいどのように?」と思います。

たとえば【お爺さんが怒って主人公を崖下に突き飛ばすのだが、その崖下にまさに魔法の道具がある】
あるいは【お爺さんはお弁当を分けてもらえなかったのでついに泣き出してしまい、そのときにお爺さんの口から落ちた金の入れ歯を見るとそこに必要な文字が書いてある】
あまりきれいな場面ではありませんが(失礼いたしました)、こんなふうに色々想像して遊んでみると登場人物たちの個性が出る場面が作れます。
そして、「最後には本当にめでたしめでたしになるの?」という新たな筋への期待も生まれ、お話の展開にも面白さが出てくると思います。

2013.6.14追記

昔話の特徴などについては、別サイトの「昔話の様式ってこんな感じ」、「文献を自分なりに解釈してみた」にも書いています。

この記事を書いた人
たまに、加賀 一
そだ ひさこ

子ども時代はもちろん、大人になっても昔話好き。
不調で落ち込んでいた30代のある日。記憶の底から突如、子ども時代に読んだ昔話の場面がよみがえる。その不思議さに心を奪われて、一瞬不調であることを忘れた。自分は昔話で元気が出るんだと気づいた。

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