【おにぎりみたいなお話作り】繰り返し

昔話というと「三回繰り返し」を連想する方は多いと思います。これは孤立化のところでも少し触れましたが、「語られるための形」なのだそうです。

文面で読んでいると無駄に思えるような繰り返しは、音で聞く形になるととても重要な役割を持ちます。まず、繰り返しによってお話にリズムが生まれます。『三回繰り返しは三回目がうまくいくものと決まっています』が、三拍目が強調されるこのリズムは人間が自然に乗れるリズムだそうで、音楽にも「バーフォーム」という技法として存在しているそうです。(小澤俊夫著『働くお父さんのための昔話入門』日本経済新聞社)

それから、じっと語りに集中していた聞き手の緊張を、繰り返しによってゆるめる効果も考えられます。まったく新しい情報を聞く時は集中して聞いていても、繰り返しだなとわかったところではその緊張は少しゆるみ、ほっと一息入れるような感じで聞く事ができます。
同時に、ほとんど同じ言葉で繰り返されるその二度目は一度目とどこが違うのか、三度目は前の二回とどのように違うのか、期待したり予測したりする余裕や楽しみも生まれます。
読むだけの物語なら不必要かもしれませんが、語って聞かせる事も考えているお話ならば、こうした繰り返しを適宜入れてあげるのも必要だと思います。

すでに存在する昔話の、繰り返しの部分を端折ってしまうのは「語られるための形」を崩してしまう事になります。不注意に形を変えてしまうのは控えるべきです。

三回目が強調される「三回繰り返し」は、お話を作る場合も面白い演出として使えると思います。何かエピソードを思いついて、それをお話の中で重要なものにしたいと思ったら、そのエピソードを三回目に組み込んだ「三回繰り返し」を作るのです。
これは繰り返しだ、とわかると聞き手は自然に三回目に心を集中します。三回目がうまくいく事はほとんど誰でもが知っています。だから、聞き手の気持ちは三回目に向かってどんどん盛り上がって行きます。印象づける効果は抜群です。
うまくいくというのは、筋が進むということです。見かけ上でそれが間違いであっても、その行動によって主人公が進むことができれば「うまくいった」と言えます。

また、別の繰り返しの形もあります。言葉で言われた事がのちに出来事として繰り返されたり、出来事が言葉で繰り返されたりという、やはりこれも文面で見るとうるさいような感じの事柄です。
しかしこれも語られるための形として大事な事です。話を聞くというのは、戻って確かめられないということですから、「大事なことは忘れないように繰り返してあげる」必要が出てくるのです。

2013.6.14追記

昔話の特徴などについては、別サイトの「昔話の様式ってこんな感じ」、「文献を自分なりに解釈してみた」にも書いています。

この記事を書いた人
たまに、加賀 一
そだ ひさこ

子ども時代はもちろん、大人になっても昔話好き。
不調で落ち込んでいた30代のある日。記憶の底から突如、子ども時代に読んだ昔話の場面がよみがえる。その不思議さに心を奪われて、一瞬不調であることを忘れた。自分は昔話で元気が出るんだと気づいた。

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