【おにぎりみたいなお話作り】ちょうどそのとき

昔話では、まさに期限ギリギリの最後の瞬間に何かが起こります。【鳥に変えられていた兄たちが妹のところに飛んでくるのは、妹が火あぶりになろうかというその瞬間】です。

このような話を私はもうハラハラ(イライラ)しながら読みました。「兄たちはもう少し早く、たったの一時間前でもいいから妹のところに来ればいいのに、そうすれば妹が火あぶりになりそうにならなくてすむのに、出来上がっているイラクサで編んだ肌着が一人分足りなかったとしても他の人の魔法は解けるのに。」この気持ちをわかってくれる人、少なくないと思います…

他の話で【自分がお姫さまの本当の結婚相手だと証明しなければならない主人公がそのお姫さまのところにやってくるのは、まさにそのお姫さまと偽の結婚相手との結婚式の日】というのがあります。
このときに、一生懸命にお姫さまのもとに向かっていてやっと到着したのがその瞬間だった、のなら普通の展開で普通のハラハラですよ。
でもね、何日も前にその町に到着していて、宿屋でのんびりしている主人公がいるんです。その日になってもすぐにお城に行かず、結婚式が始まる瞬間まで待っていて、まさに、ちょうどそのとき! にお姫さまの前に現れるのです。ああもう! 何かあったらどうするの?

…これは「その瞬間」に向かって聞き手の気持ちを盛り上げるのには効果抜群でございます、ハイ。

それから。ちょうどそのときが思わぬ効果(?)をあげる場合があります。前項でも触れた、いばら姫です。
【…そして百年が過ぎたその瞬間に、訪れた王子の口づけとともに眠りからさめます。…】
いばら姫が眠りから目ざめたのは、ちょうど百年経ったからです(と私は思っています)。でも「ちょうどそのとき」王子がやってきて口づけをしたので、その口づけがいばら姫の眠りをさましたのだという美しい誤解が生まれます。このお話がとても印象深いのはこのエピソードのおかげでもあると思うのです。
(ではなぜ他の王子を通さなかったいばらが、自ら道をあけてこの王子を迎え入れたのか? という疑問も出てくるのですが、美しく終わらせるための「エピソードの孤立化」と解釈することにします)

もしもこれが【…百年経っていばら姫はひとりで目をさましました。お城もみんな目をさまし、お城を覆っていたいばらがすうっと消えました。そのとき、この不思議なお城の前をある王子が通りかかりました。王子はお城の中に美しいいばら姫を見つけると、すぐにいばら姫に求婚しました。…】だったら? これでも充分素敵だけれど、もとのお話ほどにドラマチックな感じではなくなっています。

2013.6.14追記

昔話の特徴などについては、別サイトの「昔話の様式ってこんな感じ」、「文献を自分なりに解釈してみた」にも書いています。

この記事を書いた人
たまに、加賀 一
そだ ひさこ

子ども時代はもちろん、大人になっても昔話好き。
不調で落ち込んでいた30代のある日。記憶の底から突如、子ども時代に読んだ昔話の場面がよみがえる。その不思議さに心を奪われて、一瞬不調であることを忘れた。自分は昔話で元気が出るんだと気づいた。

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