モチーフの謎

気になっていた、モチーフという言葉の意味について。
24日にも書いたのだけれど、「モチーフ」をヤフーの辞書で引くと

モチーフ【(フランス)motif】《「モティーフ」とも》
1 文学・美術などで、創作の動機となった主要な思想や題材。
2 音楽で、固有の特徴・表現力をもち、楽曲を構成する最小単位となる音型。動機。
3 毛糸編みやレース編みで、いくつかの小片をつなぎ合わせて作る場合、その個々に編んだ小片。

と出てきます。
私が今まで使っていた意味は「印象に残るイメージ」です。じつはこれには理由があります。と言っても私が少々勘違いしていたということを先に言っておかなくてはなりませんが…

舟橋和郎さんという方の著書に『シナリオ作法四十八章 (映人社シナリオ創作研究図書シリーズ)』というのがあります。その中にモチーフの説明として

こういうことは絵(映像)にしたらどうだろうか?とひらめいた場合、その、こういうこと、がモチーフである

というような一文があります。
私はその箇所を読んで、この「絵(映像)にしたらどうだろうか」のところだけを自分流に解釈してしまったらしく、「モチーフとは印象に残るイメージの事だ」と思っていたようなのです。
実際はそうではなくて、本をちゃんと読めばわかることだったのですが、状況とか出来事とかそういったものを指すのが本当のようでした。
もう少し引用させていただくと、

 私のとらえたモチーフは、主人公の学徒兵が東大の教室でフランス文学を教えてもらった尊敬する恩師の助教授に、軍隊でもし再会したらどうなるだろうか、という事だった。
 一方は見習士官、すなわち将校である。一方はただの星一つである。雲泥の差とはこうしたものだろう。が、その二等兵は、見習士官にとっては、最も尊敬している恩師であるばかりか、日本に於ける貴重なリベラリストである。…
シナリオ作法四十八章 (映人社シナリオ創作研究図書シリーズ)中、映画「きけわだつみの声」のシナリオについての著者の記述より引用

カンペキ私勘違いしてました。(汗

だいたい私は、数多くの資料を読み込むということをしないで何となくわかったつもりになってしまいたい人間なのでして…

昔話についても「何となく」わかっているようなつもりでいるけれど、どうもこのままだとボロが出そうな気がしてきまして(つまり自分でもあやふやな感じがあるのをわかっている証拠)マックス・リューテイさんの著書で読んでいないものをもう少し読んでみようという気になり、現在読書中です。
その一冊『昔話その美学と人間像』という本の中に「モチーフとツーク」という節があります。ツークという言葉ははじめて知ったのですが、モチーフより小さなレベルをツークというそうです。
また引用ですみません。

 われわれはきわめて多くのモティーフとツークを知っている。それには分布の広いものもあれば、それほど広くないものもある。分布の広いものとしては、こびとあるいは盗賊のすみ家に逃げこんで彼らのために家事をする美しい娘、(魔法の鳥によって)実を取られるので見張りを立てなければならない黄金のりんごの木、自分のために魔法をかけられた兄たちを救う妹など。…中略…
 すなわち、「メルヒェンのモティーフ」と特に記されるのは、主として、魔法メルヒェンにとってまさに特徴的な、奇跡的、非現実的なしるしをもつ話のすじの核の事であるか、あるいは、白雪姫の七人のこびとの家での滞在と仕事のように、たくさんの異なるメルヒェンにあらわれる図式に応じたすじの核のことである。…中略…
 モティーフの概念とツークの概念の境界線は流動的である。骨が、よりによってシロップでガラス橋にはりつけられる、ということは、確実に、モティーフのレベルではなくて、モティーフの一部分、すなわちツークのレベルである。
昔話その美学と人間像
より引用

私のはモチーフではなくツークに近かったか。

それにしても、こういう文を読んでいるだけでいい気分になれることに自分で驚きます。たぶんお話そのものを読まなくても、「モチーフ集」とかそんなものを見ているだけでも私の場合は精神安定に充分効果がありそうな気がします。

2013.6.14追記

昔話の特徴などについては、別サイトの「昔話の様式ってこんな感じ」、「文献を自分なりに解釈してみた」にも書いています。

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この記事を書いた人
たまに、加賀 一
そだ ひさこ

子ども時代はもちろん、大人になっても昔話好き。
不調で落ち込んでいた30代のある日。記憶の底から突如、子ども時代に読んだ昔話の場面がよみがえる。その不思議さに心を奪われて、一瞬不調であることを忘れた。自分は昔話で元気が出るんだと気づいた。

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