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旅路のおなら

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旅路のおなら

昔々あるところに、旅の途中の男がいました。男は疲れていたので、
「温かい飯を食って、ゆっくり眠りたい」
と思っていました。

夕方になり、男はある村にやってきました。そこには静かな宿屋がありました。宿屋の前には、
「温かい食事をして、ゆっくりお休みください」
と書いてありました。男はこの宿屋に入ろうとしました。すると、誰かが男をうしろから呼びとめました。男が見ると、そこには老人がひとり立っていました。老人は言いました。
「その宿に入るのはやめておけ。」
しかし男は、
「おれは温かい飯を食って、ゆっくり眠りたいんだ。」
と言いました。
すると老人は、ふところから携帯電話を取り出して男に差し出しました。
「では、あんたにこれをやるから、困ったら使いなさい。」
男が携帯電話を受け取ると、老人はもうそこにはいませんでした。

男は携帯電話をふところにしまうと、宿に入りました。宿には、主人と、おかみさんと、子どもがいました。主人は男を親切に迎え入れました。おかみさんは、男を長い廊下の奥の部屋へ案内し、すぐに温かい夕食を運んできました。男はその夕食を
「うまい、うまい」
と言いながら食べました。
おかみさんは、
「うちのごはんはおいしいでしょう。だからきっとおなかがよろこんで、おならがたくさん出ますよ。でも気にすることはありませんよ。」
と言いました。そして、部屋から出ていきました。

男がおいしい食事を終えると、おかみさんの言う通り、さっそくプーとおならが出ました。すると、廊下をぺたぺたと子どもの足音が走ってきました。そして部屋の外から男に向かって言いました。
「おじさん、おならは出ましたか。」
男は、
「ああ、出たよ。」
と言って笑いました。子どもの足音はぺたぺたと廊下を走って行ってしまいました。

そのあと男は何回もおならをしました。するとそのたびに子どもがぺたぺたと走ってきました。そして部屋の外から男に向かって言いました。
「おじさん、おならは出ましたか。」
男はそのたびに、
「ああ、出たよ。」
と言いました。そのたびに、子どもの足音はぺたぺたと廊下を走って行きました。

夜も更けて、男は布団に入って眠っていました。
男は眠りながら、プーと九十九回目のおならをしました。そして自分のおならの音で目をさましました。するとまた、廊下をぺたぺたと子どもの足音が走ってきました。そして部屋の外から男に向かって言いました。
「おじさん、おならは出ましたか。」
男は、
「ああ、出たよ。」
と言いました。子どもの足音はぺたぺたと廊下を走って行ってしまいました。男はドアをそっと開けて、走ってゆく子どもの後ろ姿を見ました。するとなんと、子どもは小さな鬼でした。小さな鬼は、廊下の角を曲がって行きました。男はそっと気付かれないように、小さな鬼のあとをつけました。小さな鬼は、主人とおかみさんのいる部屋に入ってゆきました。主人とおかみさんも鬼でした。
子どもの鬼は言いました。
「あと一回だね。」
おかみさんの鬼も言いました。
「次で百回目ね。」
主人の鬼も言いました。
「百回目のおならをしたら、すぐに捕まえるんだぞ。」

男はそれを聞くと、急いで部屋に戻りました。そして布団をかぶって寝たふりをしながら、どうしたものかと考えました。やがて子どもの鬼が待ちきれなくなって、部屋の外までやってきました。そして、おならは今か今かと聞き耳をたてておりました。そのうちに男は、とうとう百回目のおならをしたくなりました。男は必死でおならを我慢していました。すると部屋の外で聞き耳をたてていた子どもの鬼が、
「おじさん、おならはまだですか。」
と聞きました。男は
「まだですよ。」
と言いながら、布団を抜け出し、そっと窓を開けて外へ逃げ出しました。子どもの鬼はもう一度、
「おじさん、おならはまだですか。」
と聞きました。今度は返事がありません。子どもの鬼はドアを開けました。すると、布団の中は空っぽでした。そして窓が開いていて、その窓の向こうに、逃げてゆく男の姿がありました。

子どもの鬼は男を追いかけました。男はしにものぐるいで逃げましたが、子どもの鬼はぐんぐんと男に近付いてきました。そして今にも男に追い付きそうになりました。男はもうおならを我慢するどころではありませんでした。子どもの鬼は言いました。
「おじさん!おならは、まだですか!」
ところがそのとき、男のふところから携帯電話がぽろりと飛び出しました。そしてそれが、追いかけてくる子鬼のおでこにゴチンと当たり、子鬼はすってんと転びました。その拍子に、なんと百回目のおならが、男のおしりではなく、子鬼のおしりからプーと出ました。すると子どもの鬼はあっという間に百枚の金貨になって、ばらばらと地面に散らばりました。

男が宿の方を見ると、そこにあったはずの宿はもう消えてなくなっていました。

男は百枚の金貨をふところにしまうと、また旅を続けてゆきましたとさ。めでたし、めでたし。

コメント

  1. へ~すけ より:

    楽しみにしていた塑田さんの創作話。
    しかもおならのおはなし。うれしくて
    朝から笑ってしまいましたw(^▽^)w
    もしよろしければ、また転載させて
    頂きたいです^^

  2. 久子 より:

    笑ってもらえてよかった。(笑
    こんな話でよければどうぞどうぞ。

  3. へ~すけ より:

    ありがとうございます、
    転載させて頂いたらまたお知らせします^^

  4. 久子 より:

    はい、お待ちしてます