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「恐ろしい火」

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恐ろしい火

 昔々あるところに、鬼が一匹おりました。鬼はたくさんの悪さをしたので、どこからも追い出されてしまい、行くところがなくなってしまいました。鬼はとぼとぼと歩いて、この世のおしまいのところまで歩いてきました。するとそこには恐ろしい火が燃えていて、二人の痩せた男が火の番をしていました。二人の男は交代で眠るので、火は、朝も昼も夜も消えることがなく、恐ろしく燃え続けていました。この様子をこっそり見ていた鬼は、ついに二人の男に見つかってしまいました。
 男たちは鬼を見つけると、すぐに捕まえて、棒に縛り付けました。すると鬼はしくしくと泣き出しました。それを見た二人の男は、言いました。
「今更しくしく泣いて見せたって、おまえの運命は変えられないぞ。」
すると鬼は言いました。
「ああ、最後に惨めに燃やされると分かっていたら、悪さなどしなかったのに!」
これを聞くと二人の男は、つまらなそうに、ふん、と鼻をならして、言いました。
「それじゃあ、おまえをすぐに燃やしてしまうかわりに、おまえに仕事をさせてやろう。俺達と一緒にここに座って火の番をしろ。うまくやっている間は燃やさないでおいてやるよ。」
鬼はそれから毎日、二人の男と一緒に火の番をしました。
 この恐ろしい火は、世界中の、ありとあらゆる悪者たちを一人残らず燃やしてしまうための火でした。悪者たちは次々に棺に入れられ、この男たちのところへ運ばれて来ました。男たちはその棺を、順々に火の中へ放り込んで、すっかり灰になるまで見張りをするのです。
 あるとき、二人の男が眠って、鬼が火の番をすることになりました。しかし鬼は、真夜中になると眠くてたまらなくなり、うとうとと居眠りをしてしまいました。するとその間に、恐ろしい火が、小さく小さくなって、消えてしまいました。
 目を覚ました鬼は、自分の失敗に気付き、すっかり恐ろしくなりました。そして、そろりそろりと後ろ向きに歩いて、そこから逃げ出そうとしました。しかしそのとき、二人の男が、ぱちりと目を覚ましました。鬼は慌てて、そばにあったからっぽの棺に隠れ、ぶるぶると震えていました。
 目を覚ました二人の男は、消えている火と、ぶるぶる震えている棺を見てすべてを理解しました。そして、さっきまで火が燃えていた場所に、その棺を持ってきました。それから、棺に向かって何やら呪文を唱えて、あっというまに再び恐ろしい火を起こし、棺を燃やしてしまいました。鬼は逃げ出すことができずに、燃やされて灰になりました。
 それから二人の男は、勢い良く燃えている火で、また今まで通り、ありとあらゆる悪者たちを燃やし続けましたとさ。おしまい。

コメント

  1. のこ より:

    久子しゃま ご無沙汰しております
    最近ネット上の自分と実生活の自分のギャップを感じて(というほど大げさな話じゃないんだけど)なんか楽しめない毎日でございます
    10月の執筆活動すごいです 今お邪魔して一気に「小鳥と揺りかご」まで読みました。
    このお話が一番こころ穏やかに読めました。
    「恐ろしい火」は本当に恐ろしく 頭の中はおどろおどろしい風景になっておりまする

  2. 久子 より:

    のこさん、お久しぶりですー
    来てくださって嬉しいです。私もそちらにお邪魔してはいるんですが、いつもコメントしないままでしゅみません。
    はい、できるときにやっておこうと(?)どんどんお話を作っております。(てか、三題噺は宿題のつもりなので、ただ宿題をやっているだけとも…^^;)
    やさしい穏やかなお話をたくさん書けると良いのだけど、なかなか難しいです。