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「占い師」

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占い師

 昔々、ある海辺の村に、占い師がおりました。占い師のところには、もう何日もお客が来ていませんでした。
 ある日、この占い師のそばを、牛車を引いた若者が通りかかりました。若者は牛とともにゆるゆると歩いておりました。
 占い師は、若者に声をかけました。
「もし。何かお困りのことはないかね。」
すると若者は言いました。
「何も困っちゃいないよ。だからあんたにも今のところ用事はないよ。」
占い師はまた言いました。
「いや、何か困っていることがあるだろう。ちょっと聞くがおまえさん、晩飯のおかずのあてはあるのかい。」
若者は、
「食いたければ果物がたくさん実っているし、畑には美味い野菜も実っている。ご心配にはおよばないよ。」
と言って、ゆるゆるとのどかな足音をたてながら去って行きました。
 占い師は、またお客を逃してしまいました。

 占い師はそれから何人にも声をかけましたが、誰もお客になってくれませんでした。この村には、困っている人は誰もいなかったのです。ただ一人、この占い師だけが、お客が来なくて困っていたのです。
 占い師は思いました。
「困っているのが自分しかいないのなら、自分の事を占ってみよう。」
 そして、目をつぶり、気持ちを静めて、心の中を真っ白にしました。そしてその中に自分の運命を見ようとしました。するとやがて、占い師の心の中に、小さなさざ波が見えました。そのさざ波は、何かを言っているようでした。占い師は、もっとよく心の中のさざ波の声を聞こうと、耳を塞ぎました。

 そのとき、さっきの若者が、牛車とともに走って来ました。そして占い師に大声で言いました。
「おい、逃げろ、津波が来るぞ!」
しかし、占い師は固く耳を塞いでいたので、若者の声が聞こえませんでした。占い師が動こうとしないので、若者は占い師をひょいと抱え上げて牛車に乗せると、また走り出しました。
 やがて若者と牛車は丘の上に着きました。村の人もみんな丘の上にやってきました。そのとき、牛車に乗せられていた占い師がぱちりと目を開け、叫びました。
「津波だ! 大変だ、みんな逃げろ!」
そして思いきり立ち上がった拍子に、牛車の屋根に頭をぶつけて気を失ってしまいました。

 その後も、この占い師にみてもらおうという人はひとりもいませんでしたとさ。
 めでたし、めでたし。

コメント

  1. たぬうさ より:

    占い師は基本的に自分のことを占わないらしいですが、占って当たっちゃったんですね。天災予知の凄腕だけど、もう少し早く占っとけばよかったのになあ。この場合、若者も同じ運命(しばらくして津波にあう)だったんだから、占ってもらえば、「当たらない」占い師じゃなくて、「当たる」占い師の評判が得られたのにね。日本のような、西洋のような不思議な村ですね。

  2. 久子 より:

    > 基本的に自分のことを
    ハイ、それを知っている人には驚いてもらおう、て魂胆で(笑
    時代背景云々はほぼ無視して勝手な空想をしておるので、きちっとした読者さんにはご心労(?)おかけしております。ペコペコ