「王さまの金のテレビ」

四苦八苦。
やっとまとまりました。
これでまとまったつもりになってていいのかい、ってツッコミはナシで…(^^;
「テレビ・コップ・バラの花」の三題噺です。

王さまの金のテレビ

 昔々あるところに、王さまがいました。王さまは金のテレビを持っていました。王さまの金のテレビには、「世界中のありとあらゆる素晴らしいこと」が映し出されていました。だから王さまは、世界中のありとあらゆる素晴らしいことを何でも知っていました。

 このテレビは、王さまの他には誰も入ったことのない小さな秘密の部屋に置かれていました。だから、王さまの他には誰もこの金のテレビを見たことがありませんでした。
 さて、王さまは水を飲むときは必ず金のコップを使いました。王さまはこの金のコップを誰にも触らせませんでした。なぜって、この金のコップの底には、こっそりと秘密の部屋の鍵がはめ込まれていたからです。このコップは、王さまのベッドの脇のテーブルにいつも置いてありました。

 あるとき王さまは、秘密の部屋で金のテレビを見ていました。そのとき金のテレビには、王さまが今まで見たことがないような、美しい金のバラが映っていました。金のバラははじめはふっくらしたつぼみでしたが、ゆっくりと金色の花びらを開いて、それはそれは豪華な美しい花になりました。王さまはこの美しい金のバラの花をじっと見つめました。まばたきをするのも忘れてじいっと見ていました。見ているうちに王さまは、そのバラのあまりの美しさに頭がくらくらして、顔がぼうっと熱くなってきました。
 そのとき、テレビの画面から金のバラの花が消えてしまいました。王さまはあわてました。でもあの金のバラの花はもうテレビには映りませんでした。王さまは、あの美しい金のバラの花の姿を忘れることができませんでした。
 王さまは、ぐるぐるとめまいがしてきました。王さまは横になって体を休めようと、小さな隠し部屋から寝室に戻ってきてよろよろとベッドに横になりました。しかし王さまは気分が良くなるどころか、どんどん具合が悪くなり、高い熱を出してしまいました。

 するとそこへ王さまの家来がやって来ました。そして、急に病気になってしまった王さまを見てたいへん驚き、あわてて他の家来たちを呼び集めました。それから、国でいちばん腕のいいお医者を呼びにやりました。
 お医者が来るまでの間、家来たちは氷のうを王さまのおでこに乗せたり、体の汗を拭いたり、熱をはかったりしました。王さまの熱はとても高くて、体温計が壊れてしまいました。体の汗は拭いても拭いてもどんどん出てきました。おでこに乗せた氷のうの氷はすぐに溶けてしまいました。
 家来たちは、王さまが死んでしまうのではないかと思って心配になり、居ても立ってもいられなくなりました。そして家来の一人が、王さまの手を握って、
「王さま、死なないでください! 王さま、死なないでください!」
と王さまに言いました。すると王さまの手がピクピクと動き、手から、あの秘密の部屋を開けるための小さな鍵が転がり落ちました。家来はその鍵を拾い上げました。そして「これはどこの鍵だろう」と言いました。
 しかしちょうどそこへ、国でいちばん腕のいいお医者が駆けつけました。家来は持っていた鍵をベッドの脇のテーブルに置くと、お医者を王さまのベッドへ案内しました。そして家来はそれっきり鍵のことは忘れてしまいました。

 お医者は、王さまを診察しました。しかしお医者も王さまの高熱の原因がわかりませんでした。お医者は王さまに話しかけました。
「王さま、王さまはなぜ具合が悪くなられたんですか。何かを食べたのですか。それとも、何かを見たり聞いたりしたのですか。」
王さまは苦しそうに、声を絞り出して答えました。
「バラを、見たいのだ…」
そして、言い終わるとすうっと眠ってしまいました。

 お医者と家来たちはわけがわかりませんでした。なぜって、王さまがバラを見たければ、お城のお庭に、赤や白や紫の美しいバラがたくさん咲いているからです。王さまはいつだって好きなだけバラの花を見ることが出来るのです。ふと、家来の一人が言いました。
「王さまは、このお庭にはない、珍しいバラをご覧になりたいのかも知れないぞ。」
すると他の家来も、そうだそうだと言いました。そして、王さまの眠っている顔を見ました。王さまは、少し笑っているように見えました。
「きっと、夢の中でバラをご覧になっているのだ。」
と、皆は思いました。
 その日の夕方、このお城から世界中に、こんなおふれが出されました。

『王さまのご病気を治すために、世にも珍しいバラの花を求む。持ってきたものにはポケットいっぱいの金を授ける』

 翌日、世界中からバラの花を持った人たちがお城にやって来ました。皆、それはそれは珍しいバラの花を持っていました。空のように青い色をしたバラの花、虹色をしたバラの花、花びらが透き通っているガラスのようなバラの花、蛍のように灯をともすバラの花、さらさらと美しい音を出すバラの花、それから、花の中に小さな子どもが住んでいるバラを持ってきたものもいました。こんなバラは誰も見たことがありませんでした。家来たちはこの珍しい花を見て、「これできっと王さまのご病気は治るに違いない」と思いました。しかし、王さまはこれらのどのバラの花を見ても、元気を取り戻すことはありませんでした。

 がっかりした王さまは、ベッドの脇のテーブルから小さな金の鍵を取って、よろよろと立ち上がると、秘密の部屋の扉を開けて、金のテレビをつけました。
 すると何ということでしょう! そこにはなんと、再びあの美しい金のバラの花が映っていたのです。王さまは喜びのあまり「うおおっ」と大きな声をあげました。するとその声を聞きつけた王さまの家来が、急いで王さまの寝室へ飛んできました。王さまはそのとき、寝室の隅の小さな扉の奥の小さな部屋で、目を輝かせてじっとテレビの画面に見入っていました。家来もその画面を見ました。
 そこには、例えようもなく美しい金のバラが映っていました。金のバラはふっくらしたつぼみから、ゆっくりと花びらを開いて、それはそれは豪華な花になりました。それを見ている王さまはさっきまで病気だったとは思えないくらい、生き生きとしていました。
 しかし、金のバラの花はまもなく画面から消えてしまいました。すると王さまも元気をなくしてしまい、よろよろとベッドに横になり、また高い熱を出してしまいました。家来はこの様子を見て、王さまのためにどんなバラを用意すればいいのかを知りました。
 その日の夕方、このお城から世界中に、あらたにおふれが出されました。

『王さまのご病気を治すために、世にも美しい金のバラの花を求む。持ってきたものにはポケットいっぱいの金を授ける』

 翌日、世界中から、金のバラの花を持った人たちがお城にやって来ました。皆は「今度こそポケットいっぱいの金をもらえるだろう」と思って、自分の服に大きなポケットを縫い付けてきていました。皆のポケットがあんまり大きいので、いったい皆が服を着ているのかポケットを着ているのかわからないほどでした。
 さて、集まった人たちはそれはそれは美しい金のバラを持っていましたが、よく見るとそれは、普通のバラに金箔を貼って金色にしたものであったり、金細工のバラであったり、また、金ではなく銀のバラであったりしました。そういうわけで王さまは、どのバラの花を見ても、元気を取り戻すことはありませんでした。

 がっかりした王さまは、ベッドの脇のテーブルから小さな金の鍵を取って、よろよろと立ち上がると、秘密の部屋の扉を開けて、金のテレビをつけました。
 しかし、金のテレビにはもう金のバラは映りませんでした。王さまはテレビの前に座ったまま、何日も画面を見続けていました。しかし、やはり金のバラが映し出されることはありませんでした。
 王さまの目から、ぽろりと涙が落ちました。王さまは立ち上がると、顔を洗って服を着替えました。そして水を飲むための金のコップをポケットに入れると、こっそりお城を抜け出して、金のバラを探しに出かけました。

 王さまはお城から出ると、大きな通りを歩き始めました。途中、たくさんの国を通りましたが、金のバラは見つかりませんでした。王さまはどんどんと歩き続けました。そして、世界中の国をひとつ残らず通りましたが、金のバラは見つかりませんでした。やがて道のまわりには何もなくなりました。しかし道はまだ遠くへ続いていました。王さまは、そのままどんどん道を歩いて行きました。王さまの顔は埃だらけになり、着ていた服はボロボロになりました。どこまで歩いても、道の他は何も見えてはきませんでした。しかしそれでも王さまは歩き続けました。
 そうして歩いて行くうちに、王さまはついに、道の終わりにやって来ました。そこには大きな金の扉がありました。王さまは扉をノックしてみましたが、誰も出て来ませんでした。王さまは扉を押したり引いたりしてみましたが、扉はびくともしませんでした。王さまは、扉の隙間から中を見てみようと思いました。しかし扉はぴったりと閉じており、どこにも隙間はありませんでした。

 さて、そのとき、王さまのお城の中は大騒ぎになっていました。王さまが寝室からいなくなって、お城の中のどこを探しても見つからなかったからです。家来たちはお城中を探し、国中を探し、世界中を探しました。しかし王さまはどこにもいませんでした。
 家来たちはもうどうしてよいのかわからなくなり、王さまの寝室に集まって、皆で泣いていました。王さまが扉を開けたままにしてあった秘密の部屋の中で、王様の姿を思い出して泣いている家来もいました。王さまが見ていた金のテレビはつけたままになっていました。画面には、「ありとあらゆる素晴らしいこと」が次々に映し出されていました。
 そしてある瞬間、その画面に、王様の姿が映し出されました。秘密の部屋にいた家来はびっくりして、急いで他の家来を呼びました。家来たちは皆、金のテレビの前に集まってきました。
 画面の中では、王さまが、大きな金の扉を開けようとして、ありとあらゆることを試していました。しかしどうやっても扉はびくともしませんでした。家来の一人が、たまらず叫びました。
「王さま、頑張ってください!」
すると、他の家来も叫びました。
「王さま、頑張って!」
「王さま、しっかり!」
「王さま、王さま!」

 家来たちが応援してくれているとは、王さまは少しも知りませんでした。王さまは扉を飛び超えようとして高く飛び上がりましたが、扉のてっぺんには届きませんでした。それから王さまは、地面を掘って中に入ろうとしましたが、地面は鉄のように固くて掘ることができませんでした。それから王さまは、勢いよく走ってきて扉に体当たりしてみましたが、扉はびくともしませんでした。王さまはどうやってもこの大きな扉の向こうに行くことはできませんでした。王さまは途方に暮れてしまいました。そして扉の前に座り込み、ぼんやりと空を見ました。空には雲一つなく、一羽の鳥も飛んでいませんでした。王さまは自分がどこを見ているのかわからないような気がしてきました。

 すると、かすかに水のせせらぐ音が聞こえてきました。王さまはそのときはじめて、自分の咽がカラカラに渇いている事に気がつきました。王さまが音のするほうを見ると、そこにはきれいな小川がありました。王さまは金のコップに水を汲み、ごくんごくんと飲み干しました。水はとてもおいしくて、王さまはまるで生き返ったような気持ちになりました。王さまはもう一度コップに水を汲み、それを飲もうとしました。

 そのとき、どうしても開けることの出来なかった大きな金の扉が、すうっと開きました。びっくりした王さまは、水を飲むのも忘れて扉の奥を見つめました。その扉の奥には、王さまが長い道を歩いて探し続けてきた、美しい金のバラが立っていました。王さまは、息が止まりそうになりました。
 バラは王さまに言いました。
「今、水を飲む音が聞こえたのですが、それはあなた?」
王さまは、そうだ、と答えました。するとバラは、
「ああよかった、お願いです、私にも水をわけてくださいな。このままでは私は枯れてしまいます。」
と言いました。
 王さまは手に持っていたコップの水を、バラの根元にかけてやりました。するとバラはそのふっくらしたつぼみをゆっくりと開いて、それはそれは美しい金の花を咲かせました。
 王さまはその美しさにすっかり胸を打たれ、ぼろぼろと涙をこぼしました。すると、次の瞬間、金のバラは、美しい人間の娘になりました。王さまは感激し、すぐに王さまと娘は結婚しました。そしてふたりはいつまでも幸せに暮らしました。

 この様子をお城の中で見ていた家来たちは、王さまの幸せを喜んで、それはそれは盛大な宴会を開きました。そこには世界中の人たちが招待されました。そして、幾晩も、幾晩も、飲んだり食べたり歌ったりしました。きっと今もお城では、世界中の人たちが飲んで歌っていることでしょう。

 めでたし、めでたし。

沈没。
三題噺についてはこちら。
大昔に本で三題噺というのを知りました。
で、昔話らしからぬこんなお題を選んだ理由は、、
その本の中で三題噺の例題として出されていたのですが、その当時、このお題でなんにも作れなかったので、自分の能力のなさにショックを受けたのですねきっと。(なにせコドモ時代でしたから。笑)
んで、この三題のことを思い出したついでに「よっしゃーこれで昔話にしてやるわいっ」ていうあまのじゃくな気持ちがムクムクと…
よーするに27年前のリベンジですな。(笑

コメント

  1. りぶ より:

    すごいすごい!!
    面白いですよ、このお話。
    何かほのぼのとしたエンデイングでほっこりしました。久子さんのお話は不思議とイメージがすぐに浮かび上がるんだよね、自分の中で。
    3つのものがどうつながるんだろうって、それはそれは不思議でしたが、面白くつながっていて、本当に面白く思います。
    よかったらどうしてこの3つを題材にしようと思ったのか教えてもらえればもっと楽しいなあ^^

  2. 久子 より:

    りぶさん、読んでくださってありがとうー
    もしかして頭の中のイメージ似てるのかな(ご迷惑かも?笑)
    感想いただけてほっとしました。
    前半はどんどん書いていても、途中からどうやって話を終わらせたものかと困り始めてしまって、結局ラストはオーソドックスな感じにしました。お題が決まってると悩み倍増だわー。
    本当の作家さんの苦労はこんなものじゃないのだろうけど…ぅぅ
    お題の理由もちょこっと書きました、えへ(^^;