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「カッパと山姥」

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カッパと山姥

 むかしむかし、山奥に、山姥がひとりで住んでいました。山姥の家の庭には、小さなきゅうり畑がありました。
 山姥の家の近くには小さな池があって、その池には、小さなカッパがひとりで住んでいました。
 カッパは時々山姥の家に遊びに来ました。カッパが山姥の家に来るときは、山姥の好物の池の魚をおみやげに持ってきました。
 山姥も、カッパが遊びに来ると、カッパの好物のきゅうりのぬか漬けを出してもてなしてやりました。山姥はふだんひとりで暮らしていたので、カッパが遊びに来るのを楽しみにしていたのです。

 その朝、山姥はいつものように、小さなきゅうり畑でとれたきゅうりをぬか漬けにしました。夕方近くになって、そろそろ夕ご飯にしようかと思っていると、ちょうどそこへ、カッパが魚を持って遊びに来ました。
 山姥はカッパを見ると、
「おお、カッパよ、ちょうどいいところへ来なさった。きゅうりがおいしくできたから、夕ご飯を食べていきなさい。」
と言って、カッパを縁側に座らせました。
 カッパは魚を山姥にさし出しました。山姥は、美味しそうな魚を受け取ると、さっそく台所で焼きました。そして、焼けた魚をお皿にのせて、縁側に運びました。
 それから、朝漬けたきゅうりを出して、コトンコトンと切りました。 それから、大きなお茶わんに自分のご飯を、小さくてかわいいお茶わんにはカッパのご飯をよそいました。
 そして、きゅうりとご飯も縁側に運びました。

 山姥とカッパは、縁側で並んでご飯を食べました。
「きゅうり、美味しいね」とカッパは言いました。「この魚も、美味しいよ」と山姥も言いました。
 ふたりはゆっくり、ご飯を食べました。そして、ご飯の後の温かいお茶を、ゆっくりと飲みました。
 やがて、日が沈んで、遠くの空に一番星が見えました。カッパは、言いました。
「そろそろ帰り道が暗くなるから、帰らなきゃ。」
 山姥は言いました。
「そうか、気を付けて帰りなさいよ。」
 カッパはちょこんと縁側から降りると、ポタポタと池へ向かって歩きました。途中で、ちょっと振り向いて、縁側に座っている山姥に、小さな手を振りました。山姥も、手を振りました。
 カッパが池に歩いて帰るのを、山姥はずっと見送っていました。そして、カッパの姿が見えなくなると、言いました。
「また、来ておくれよ。」

 そして、二人で食べたご飯の片付けをしようとすると、魚のお皿やきゅうりの小鉢やご飯のお茶わんと一緒に、ちいさな丸いお皿が置いてありました。
「これは、何を食べたお皿だったかな。」
と山姥は言いました。そして、お皿をじっと見ているうちに、カッパの事を思い出しました。そして、このお皿が、カッパの頭の上にあるお皿にそっくりなことに気がつきました。
「ありゃ、これは大変だ。カッパがお皿を忘れていったぞ。」
 山姥はそう言うと、そのお皿をふところに大事に入れました。そして、庭の小さなきゅうり畑からきゅうりを一本もいで、それもふところに入れました。そして、カッパが住んでいる池まで歩いていきました。

 池につくと、山姥は、カッパを呼びました。
「カッパよ、カッパよ。忘れ物だぞ。」
 しかし、カッパは出てきません。池の水はしんと静かで、まあるい月が映っていました。
 山姥はもう一度呼びました。
「カッパよ、カッパよ、忘れ物だぞ。」
 しかし、まだカッパは出てきません。池に映ったまあるい月は、しんとしています。
 山姥は、言いました。
「カッパよ、カッパよ、山姥が遊びに来たぞ。わしの畑から、もぎたての美味しいきゅうりを持ってきたぞ。一緒に食べよう。」
 すると、池の水がゆらゆらと小さくゆれて、池に映ったまあるい月もゆらゆらとゆれました。そして月のまん中から、カッパの頭がちょこんと出てきました。
 山姥は言いました。
「おまえの頭にお皿がないと大変だと思って、持ってきてやったんだが、かわりにお月さんをお皿にしているなんて大したやつだなあ。」
 そして、あはは、と朗らかに笑いました。カッパも、あはは、と照れながら笑いました。

 山姥がカッパにお皿を返すと、カッパはお皿を頭に乗せました。
 山姥とカッパは池のそばに腰をおろしました。山姥はふところからきゅうりをとり出すと、パキ、と半分に割って、カッパと一緒にパリパリと食べました。山姥は言いました。
「池のそばも、いいもんだな。たまにはわしも、きゅうりを持って遊びに来るとしよう。」
 カッパはそれを聞くと、うれしそうに、うんうんうん、とうなずきました。すると、そのひょうしに、頭のお皿が、ずるっとすべって落ちました。
 山姥は、あれあれ、と言ってお皿を拾いました。しかしカッパは言いました。
「山姥、そのお皿は山姥にあげるよ!」
 そして、今度は山姥より先にカッパが、あはは、と笑いました。そして、元気に立ち上がると、タタタ、と走って、ポシャン、と池に飛び込みました。

 山姥は元気なカッパの様子を見て安心し、よっこいしょと立ち上がって、家に向かって歩きました。
 途中、振り向いて池を見ると、水に映ったまあるい月のそばから、カッパが小さな手を振っていました。

 山姥はカッパにもらったお皿を大事にふところにしまって、きれいな月にてらされた夜の山道を帰って行きました。
 もしも山奥で山姥の家を見つけたら、庭にあるきゅうりをもいではいけませんよ。カッパががっかりしますからね。

はじめは違う方向に展開する予定だったのですが、少し進めたら、おばあさんの家に孫のような歳の子どもが遊びに来る、というイメージになってきて、こちらのほうが気に入ってそのまま書き進めました。

コメント

  1. のこ より:

    久子さん このお話 いいです!
    最初山姥とかっぱの取り合わせが「???」と思ったのは たぶん山姥=やまの人 となると 相棒はタヌキかキツネかな?という勝手な私の思い込みでした(笑)
    このお話は 『ころがりたまご』同様に ス―ッと情景が目に浮かびました 小さなちょっと猫背のかっぱが振り返って手を振る様もちゃんと見えました。
    悲しいお話ではないのに 3回くらい読んでいたらポロリと涙が出ました。

  2. 久子 より:

    のこさん、ありがとー
    はじめの予定(結末)を却下して、頭にうかんでくるままに書き進めました。
    きっとそれが良かったんだねえ…(笑
    これは自分でも好きなお話なので嬉しいですー。

  3. たぬうさ より:

    お皿!このカッパさんは、神通力よりも山姥(ときゅうり!)が大事なのですね。気持ちのまま素直にそうしているカッパさんと、これまた素直に受け入れている山姥がいいなあ。山姥・・・・・・ぬか漬け、漬けてるんだ・・・・・・。

  4. 久子 より:

    くすくす
    たぬうささん、混乱させてしまったみたいでごめんなさい。
    私の話はだいぶ無茶苦茶ですよね ^^;