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葉っぱと着ぐるみと昔々

長い休みの間に読んでいた本、『ヨーロッパの昔話―その形式と本質 (民俗民芸双書)』(マックス・リュティ著 小澤俊夫訳 岩崎美術社)。
関連分野の研究者・学生のあいだでは基礎的文献としてひろく読まれている本だそうです。この本からいろんな派生本(と言って良いのかどうかわかりませんが)がうまれるわけで、そのおおもとの本を読んだことで、私にも得るものがありました。
ちなみにこの本、図書館でしか読めないのでAmazonの中古品で買いました。

以前昔話関連本を読んで何となく理解はしたけど納得がいかなかったこと、「孤立性」。
昔話は「孤立性と普遍的結合の可能性」に貫かれた抽象的様式の物語。そのいちばん重要な「孤立性」に納得がいっていなかったのです。

エピソードの孤立性。エピソードの一つ一つはカプセルに入っているという説明では私にはイマイチよくわかんなかった。いや、お互い関連がないということはわかったけれどストンと納得がいかなかった。
【一人目の兄が出かけていって課題に失敗して帰ってきて、家でその話をする。次に二人目の兄が出かけていって、同じ状況に出くわして、同じように失敗して帰ってきて、家でその話をする。次に三人目の主人公が出かけていって、同じ状況にでくわして、見事に成功する。】このエピソード、二人目が失敗したのは話を聞いていなかったからではないし、主人公が成功するのも失敗から学んだわけではない。二人目が失敗したのはそれが脇役の役目だから、主人公が成功したのはそれが主人公の役目だから。
それぞれのエピソードは全く無関係だから、それぞれの場で当事者たちが今の状況を他のエピソードと関連付けて考えたりしないのです。

で、昔話には繰り返しがあります。同じ状況、同じ会話、それを同じ文章で繰り返す。
各エピソードが無関係ならば、どうして各エピソードはこんなに似ているのか。

これ、本のなかでは「あとででてくる場面は、以前にでてきた場面の写しではない。あとの場面が前の場面と非常によく似ているのは、ただ両者が同一の根源をもっているからにすぎない。たがいのあいだではその両場面は孤立している。しかしその両場面とも、全体に一貫してながれている、おなじ形に作ろうとする意志の子なのである。おたがいのあいだでは関連はないが、同一の中心によって形成され、保持されている。」と説明されています。

これって、木の葉っぱと同じことだよね。
一本の木から出る葉っぱは同じ形であり、しかも葉っぱはそれぞれ独立していて(孤立していて)、存在するために他の葉っぱを必要としたり他の葉っぱを参照したりすることはない。
そうか、そうか。そゆことか。
エピソードのひとつひとつは、葉っぱの一枚一枚なんだ。って思ったら納得できました。

それから、人や物が孤立しているがゆえに普遍的結合の可能性をもつ、ということ。
人や物が孤立しているというのもイマイチぴんとこなかった。
王さまは物語の中で王さまとしての環境をもっていない。公務もしていないし、お付きの人もなしに一人でふらふらとどこへでも行ってしまう。だから誰とでも接触できる。
孤立しているというのは環境がないこと?っていうふうに何となく理解していました。

でもじつは「本当の王さま」を周囲から孤立させているのではなくて、「ただの存在」が王さまの着ぐるみを着ているんじゃないか、と思ったらずっと考えやすかった。
見かけは王さまだけど、「誰でも何でもないただの存在」が王さまの着ぐるみを着てうごいているだけで、他の登場者たちもそれをわかっているし、自分たちもそれぞれの着ぐるみを着た「ただの存在」である。「ただの存在」は環境もしがらみももっていない。だから、誰とでも何とでも接触できる。普遍的結合の可能性をもつ。

人も物もエピソードも孤立している。

それからもうひとつわかったこと。
「昔々あるところに」という言葉。これは本当に昔の事を語っているから昔話なのではなく、物事を抽象的に語るための表現である、ということ。昔話の「様式」なのだということ。

この「昔々」という言葉を今まで自分は真に受けていて、「この昔話ができたころからの昔よりも今できる昔話はもうちょっと最近の時代でもいいんじゃないかな、でも電話とかが出てくるとその通信手段で何でも解決できちゃいそうだから昔話には使えないよね、だって昔話だもんねー。」って、思ってました。

でも全然そんなことはなく、昔話の様式をきっちり守れば、現代のモノを使ってもまったく問題なしなのだ!ということに、気がついた。
むしろ、昔話が好む金属的や輪郭のはっきりしたものというのは、現在のほうがたくさんあるように感じる。車、電車、飛行機。ビル、劇場、電波塔。冷蔵庫、ダンボール箱、携帯電話。ガラスの飛行機に乗って雲の上の劇場に行くなんて楽しそうじゃないですか!

箱のメインコンテンツはこんな感じです。現在進行形なので頑張って進めてゆきたいです。

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