キンドル本をKindle Unlimited で読んでいただけます

Amazonで販売している電子書籍「三十一郎(みそいちろう)」を、KDPセレクトに登録しました。
Kindle Unlimited にて、無料でお読みいただけます!

商品ページはこちら

昔話はどんな話か

私は昔話という言葉の意味をえらくあいまいにとらえていたようであります。
「創作昔話を書いています」とプロフィールに入れているのに今更なにを、なんだけど…(アセ
今まで書いたお話には、これは昔話の形式にはあてはまらんだろうなー というようなのが何編もあります。本人は書いているときには昔話だぞと思っておったのですが、今考えるに、正確には、「昔話ふうのお話と、童話のようなお話」と言わねばならない…です。

何となくわかったつもりになっていた昔話の色々だけれど、今になって「あ、そゆことか」とやっと理解できた(と思う)ようなことがあるので、それをちょっとずつメモっておこうと思います。

昔話は、どんな話か。
映画やテレビドラマや小説にふれるときの私たちの関心って、ほぼ大多数の人は、きっと、登場人物そのものに向けられていると思います。
彼は何を考えているのか、彼はここでどうするのか、彼はなぜああいう行動をしたのか、彼は彼女の事をどう思っているのか、彼女は彼をどう思っているのか、彼を取り巻く人間関係はどうなるのか、とか色々色々…。
主人公の心の葛藤や、主人公の成長、変化、そして主人公の選択、運命、そのときの主人公の反応、周囲の反応。
観客(読者)は主人公の心に関心を持ち、知人を見守るかのようにハラハラしたり応援したりしながら主人公の運命を見守ります。(たぶん。)

人間がいちばん興味のあるものは何だと思う? と、生徒に質問した教師がいました。たしか私が小学校の四年生くらいのとき。生徒はいろんな事を言うのだけどなかなか答が出ず、しばらくたってからようやく「人間」という回答をした子はちょっと自信なさげな様子だったような。でも、そう、その教師の示した答えは「人間」でした。
なるほどー、だったり、そうなのか?だったり、みんなが「スッキリ!」な雰囲気ではなかったようにおぼえてます。今なら「そうよねー」って言えるけどね。(笑)

で、本題の昔話。
昔話のいちばん大事なものは、登場人物の心のありようではなく、お話の「すじ」なのだそうです。
主人公の役目は、話の終末に向かってひたすらに進むこと。
途中で起こるエピソードも、主人公はいつも「すじを進める」ための選択をする。それが偶然の結果であっても。
聞き手の関心は、「それからどうなるの?どうなるの?」という、お話の続き、です。(たぶん。)

それはなぜなのか、と正しい理由をきちんと説明できればよいのだけれど、このさきは私の推測。
昔話は口承されてきたもの、つまり語り手の話すのを聞く、というのが本来の姿なので、小説を読んだり映画を見たりという事とは少し事情が違うのだと思います。
目から入る情報量はとても豊富なので、映画を見た人はほぼ現実に近い感覚でその世界を感じる事ができるし、人物のほんの少しの表情からでもその心理状態を感じとることができたりします。その人物の容姿とか、置かれている環境とか、もういろんな事が、ほんの数シーンで伝わってきたりもしますよね。
小説を読む場合でも、基本的にひとりで読むものであるから、何十ページも何百ページも費やして詳細に述べられた主人公の生い立ちから現在の状況、心の機微、迷い、葛藤、選択、運命なんかを、時間をかけてゆっくり感じとり味わいながら読み進める事ができるわけです。

でもこれを耳から、人の声で、言葉で聞くとなると、情報量がものすごく限られてしまいますよね。
「むかしむかしあるところに、美しいお姫さまがいました」という言葉を聞いたとすると、聞き手は、「むかしきれいなお姫さまがいた」ということを頭においておくことくらいしかしないでしょう、たぶん。で、「それで?」というふうに、次の言葉を待つでしょう、たぶん。すると次に、「ある日お姫さまは、誰も行った事のない暗い森へ、たったひとりで出かけて行きました。」という言葉が聞こえてくる。そうすると聞き手は、「そんなところへひとりで行っちゃったのか、それで?」と思う。すると次に、「そして道に迷ってしまいました。」と聞こえてくる。聞き手は、「あーあ、どうするの、それで?」すると次に…
たぶんこんなふうに聞き手は反応するのだと思います。
「むかし」がいつの時代で、「あるところ」がどこで、「美しいお姫さま」がいったいどんな顔をしていてどんなスタイルをしていてどんな服を着ていて歳はいくつなのか、「誰も行った事のない森」はどんな森なのか、どうして誰も行った事がないのか、どうしてお姫さまはひとりでその森へ行ったのか、という事は、話し手が説明しない限り聞き手にはわかりません。
…しかししかし。
実際に人の話す「お話」を聞く、という場合に、もしあなたなら、こういう詳細を事細かに聞きたいと思いますか?
お話を聞くつもりでいるのに、ストーリーがなかなか進まないで、
「いつの時代のどういう場所に、髪の色はこうで目の色はこうで肌の色はこうで、着ている服はこうこうで、身のこなしはこれこれで、歳はいくつのお姫さまがいて、このお姫さまはある日誰も行った事のない森へひとりで…この森はどうして誰も行った事がないかというとこれこれこういうわけで…それでなぜひとりで森へ行ったかというとこのお姫さまは昔から人の言う事にさからってばかりいるあまのじゃくなので、この森へも絶対に行くなと言われていたからとうとう行きたい気持ちをおさえきれなくなってしまってこっそりひとりで出かけていったわけで…」

うーん。面白かったら聞いちゃうかもしれないけどさ。
でもお話の続きを聞きたいのになかなか進まなかったり、横道にそれてしまったり、時間を戻って話をしたりされたら、肝心の「すじ」がこんがらがりゃあしませんかい。
てなわけで、「お話を聞く」というこころがまえの時には、すとん、すとん、と単純な言葉で、ひたすら「すじ」を追って話してくれるのがとても聞きやすいんじゃないかな、と思うわけです。

もちろんこれは昔話に限って言って(推測して)おりまするので、どぞ誤解なきように。

コメント