【三題噺】「アリのランプ」

アリのランプ

昔々ある町に、腕のいいランプ職人の男がいました。ランプ職人の男には、作れないランプはありませんでした。お客がどんなに難しい注文をしても、翌日には注文どおりのランプがきちんと出来上がっていました。だから、男は町ではちょっとした有名人でした。

ある夜、仕事を終えたランプ職人は、いつものように小さなレストランで夕食をとっていました。なじみの席と、なじみの料理と、なじみの音楽は、ランプ職人の心をほっとさせました。このレストランにいると、ランプ職人は自分の家にいるような気持ちになり、つい、食べ終わったお皿を舌でなめたりすることもありました。
おいしい食事の後、お茶とお菓子を運んできた給仕が、ランプ職人にたずねました。
「ランプ職人さん、あなたはどんなに難しいランプでも作ってしまうそうですが、それは本当ですか?」
ランプ職人は言いました。
「もちろん、本当だとも。今までに私にできなかった注文はひとつもないよ。」
すると給仕は、言いました。
「それを聞いて安心しました。じつはあなたに、小さなお客様がおいでです。昼からずっと、この店であなたを待っておいでです。」
そして給仕は、店の隅に向かって合図をしました。すると、小さな小さなアリたちが、ぞろぞろと行列を作ってランプ職人のテーブルの上までやって来ました。先頭にいたアリが、ペコリとおじぎをして、ランプ職人に言いました。
「ランプ職人さん、どうか私たちに、ランプを作ってください。もし私たちにランプがあったら、夜でも外に出られます。私たちは、夜の世の中を冒険してみたいのです!」
ランプ職人は驚きました。そして、アリがランプを持ってぞろぞろと夜の道を歩いている姿を思って、なんだか楽しくなりました。ランプ職人は言いました。
「よし、承知した。明日の夜、またここへ来なさい。ランプを仕上げて持ってこよう。」
アリたちはお礼を言うと、ぞろぞろと行列を作って店を出て行きました。しかし夜道は暗く、アリたちはつまづいたり転んだりしながら、巣に帰って行きました。

ランプ職人は次の日、小さな小さなランプをたくさん作りました。そして夜になると、また小さなレストランへ出かけました。
アリたちはもう、ランプ職人のなじみのテーブルで待っていました。そして、嬉しそうに小さなランプを受け取ると、何度もおじぎをして、店を出て行きました。アリたちは、暗い夜道で、美しいほのかな灯の行列になって、夜の冒険に出かけて行きました。
それからランプ職人はいつものように、おいしい食事と、なじみの音楽を楽しみましたとさ。めでたし、めでたし。

この記事を書いた人
たまに、加賀 一
そだ ひさこ

子ども時代はもちろん、大人になっても昔話好き。
不調で落ち込んでいた30代のある日。記憶の底から突如、子ども時代に読んだ昔話の場面がよみがえる。その不思議さに心を奪われて、一瞬不調であることを忘れた。自分は昔話で元気が出るんだと気づいた。

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「塑田久子、お話を作る」の記録ブログ

コメント

  1. たぬうさ より:

    いよっ!職人!
    さりげなく取り次いでいる給仕さんがちょっぴり気になるのでした。ツッコミじゃないです。異界への案内人はミステリアスで素敵。

  2. 久子 より:

    ははは、こんなアリの行列を見てみたいなーと思ってできた話です。

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