【作品】「三匹のねずみ」

三匹のねずみ

むかしむかしあるところに、三匹のねずみの兄弟が仲良く暮らしていました。
ところが、ある日、食べ物を探しに出かけたいちばん上の兄さんが、いつまでたっても戻ってきませんでした。
残った二匹は心配して、兄さんを捜しに出ました。するとなんと、兄さんは猫に食われてしまっていました。二匹は泣きながらすみかに帰り、兄さんのためにお線香を立てて手を合わせました。

次の日、こんどは中の兄さんが食べ物を探しに出かけました。ところが中の兄さんも、いつまでたっても帰ってきませんでした。
弟は心配になって、中の兄さんを捜しに出ました。するとなんと、中の兄さんも猫に食われてしまっていました。弟は大泣きしながらすみかに帰り、いちばん上の兄さんと、中の兄さんのためにお線香を立てて手を合わせました。

次の日、とうとう弟が食べ物を探しに行かなくてはならなくなりました。
弟が食べ物を探して歩いていると、おにぎりがひとつ落ちていました。
弟はそれを拾い上げ、がつがつと食べはじめました。
すると後ろから「おい、それを私にもわけてくれないか」という声がしました。見ると、仕立て屋がしょんぼりと道ばたに座って弟を見ていました。仕立て屋のおなかが、グー と鳴りました。
弟は仕立て屋に、まだ食べていない分を分けてあげました。仕立て屋はそれをぺろりと食べてしまうと、言いました。
「ああ、これで懐かしい家に帰る元気が出た。私は仕立て屋なんだがさっぱり商売がうまく行かなくて、仕立て屋をやめて故郷に帰るところだったのだ。食べ物を分けてもらったおれいに、おれの商売道具をあげよう。おまえに服は必要ないが、何かの役には立つだろう。」
そしてねずみの弟に、針と、糸と、ハサミをくれました。

弟がすみかに戻ろうと歩いていると、急にあたりが暗くなりました。兄さんたちを食べてしまった大きな猫が、こんどは弟の前に現れたのです。
弟が逃げる間もなく、猫は鋭い爪で素早く弟を引っ掛けて、ポイと口に放り込み、ゴクンと呑み込んでしまいました。

弟は、窮屈な猫ののどを通って、猫の胃袋に着きました。
するとなんと、そこにはいちばん上の兄さんと中の兄さんが、生きていました! 三匹はまた会えた事をとても喜びました。そして、なんとかしてここから出なければ、と相談しました。
いちばん上の兄さんは弟の持っていた針を見て、「それでつついてみよう」と言いました。そしていちばん上の兄さんは猫のおなかの中を針でちくちくつついてみましたが、猫はくすぐったがってケロケロと笑っただけでした。
中の兄さんは弟の持っていた糸を見て、「それでのどちんこを引っ張ってみよう」と言いました。中の兄さんは糸の端を猫ののどちんこに結びつけ、くいっと引っ張りました。
すると猫は「ほえ、ほえ、ほえっくしょーん!」とくしゃみをしました。猫のくしゃみと一緒に、結わえ付けた糸も猫の口からポシャッととび出しましたが、三匹は外に出ることは出来ませんでした。
弟は、残ったハサミを見て言いました。「これで、猫のお腹を切ってみよう」
三匹は力を合わせてじょきじょきと猫のおなかを切りはじめました。  そのとき猫は、急にのどがかわいて水を飲みたくなりました。猫が立ち上がって川に向かってよろよろと歩き出すと、そのひょうしに、三匹のねずみたちはボタボタと猫のおなかの切れ目から落ちました。
三匹は一目散で逃げました。
猫は自分のおなかからねずみが逃げて行ってしまったのに気付くと地団駄をふんでくやしがりました。そして、三匹が残していった針と糸で自分のおなかをもとどおりに縫い合わせました。そして、おなかがからっぽになってしまったので、また獲物を探しに出かけて行きました。

猫とねずみは、きっと今日も元気に暮らしていますよ。

おしまい。

* * *

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この記事を書いた人
たまに、加賀 一
そだ ひさこ

子ども時代はもちろん、大人になっても昔話好き。
不調で落ち込んでいた30代のある日。記憶の底から突如、子ども時代に読んだ昔話の場面がよみがえる。その不思議さに心を奪われて、一瞬不調であることを忘れた。自分は昔話で元気が出るんだと気づいた。

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コメント

  1. のこ より:

    久子さま 娘と最後の「おち」に悶絶でした(爆)

  2. 久子 より:

    のこさん、やつはしぶといのです!(笑

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